2024.12.18
  • 子育てコラム

アメリカの給食は日本とメニューがどう違う?最新の制度も解説

アメリカの学校給食は、日本とは全く異なるシステムで運営されています。カフェテリアでメニューを選び、友達と一緒に食事を楽しむスタイルは、まるでレストランのよう。しかし、この違いは単なる食事スタイルだけではありません。本記事では、アメリカの学校給食の特徴から最新の制度改革まで、日本在住の方にも分かりやすく解説していきます。これから留学や移住を考えている人にも役立つ記事になっています。

アメリカの給食の定番メニューは?

人気No.1はピザ!定番の温かいメニュー

アメリカの学校給食で最も人気が高いのは、金曜日に定番で提供されるピザです。チーズピザやペパロニピザから選べ、ほとんどの学校で週1回は登場します。日本の給食のように手作りではなく、学校と契約を結んだピザチェーン店から届けられることが一般的です。次いで人気なのがチキンナゲットとハンバーガー。これらのメニューは、日本の給食では珍しい「選択制」で提供されています。温かいうちに食べられるよう、カフェテリアに備え付けられた保温設備で適温に保たれています。

その他の定番メニューには、グリルドチーズサンドイッチ、ホットドッグ、マカロニ&チーズなどがあります。特にマカロニ&チーズはアメリカの子どもたちに愛されている伝統的なメニューで、クリーミーなチーズソースとマカロニを組み合わせた料理です。最近では健康志向を反映して、全粒粉のパスタを使用したり、チーズソースの脂肪分を抑えたバージョンを提供する学校も増えています。また、タコスやブリトーなどのメキシカンフードも人気メニューの一つで、アメリカの多文化性を反映した選択肢として定着しています。

アメリカでは朝食も給食で提供!メニューは?

日本では馴染みの薄い朝食の提供も、アメリカの学校給食の大きな特徴です。シナモンロール、パンケーキ、ベーグルなど、日本人からすると甘すぎると感じるメニューが並びます。これは、アメリカの朝食文化を反映したもので、特に忙しい朝の時間帯に子どもたちが手軽に栄養を摂取できるよう工夫されています。

最も人気が高いのは、様々な味付けのシリアルです。プレーンタイプの他、ハニーナッツやチョコレート味など、子どもたちの好みに合わせて数種類から選べます。牛乳をかけて食べるのが定番で、朝の短い時間でも手軽に摂取できる朝食として重宝されています。また、温かい朝食としてフレンチトーストやハッシュブラウンなども提供され、寒い冬場に特に人気があります。朝食は通常、授業開始前の30分程度の時間帯に提供され、希望する生徒だけが利用できる仕組みになっています。

サイドメニューとドリンクの選び方

アメリカの給食では、メインディッシュと一緒に必ず野菜やフルーツを選ぶことが求められています。これは連邦政府の栄養基準に基づく要件で、バランスの取れた食事を提供することが目的です。生のニンジン、セロリスティック、リンゴ一個、サラダなど、日本の給食と比べるとかなりシンプルな提供方法が特徴です。サラダは、レタス、キャベツ、ニンジンなどの野菜を組み合わせた基本的なものが多く、ドレッシングは別添えで提供されます。

飲み物は牛乳が基本ですが、最も人気があるのはチョコレートミルクです。実に9割以上の生徒がチョコレートミルクを選択しているという調査結果もあります。これは砂糖の摂取量という点で議論を呼んでいますが、カルシウムやビタミンDの摂取を促進する効果もあるとされています。他にもストロベリーミルクや無脂肪乳なども選択肢として用意されており、生徒は好みに応じて選ぶことができます。ジュース類は朝食時のみ提供される学校が多く、主にオレンジジュースやリンゴジュースが選べます。

日本とアメリカの学校給食の決定的な違い

選択制vs全員同じメニュー

日本の給食は全員が同じメニューを食べるのに対し、アメリカでは複数のメニューから自分の好きなものを選ぶことができます。この違いは、単なる好み以上の意味を持っています。宗教上の理由で特定の食材を避ける必要がある生徒や、健康上の理由で制限のある生徒など、多様な背景を持つ生徒たちへの配慮がこのシステムには組み込まれているのです。

また、給食を食べずに弁当を持参することも一般的です。日本のように「お弁当の日」という特別な日を設定する必要はなく、毎日自由に選択できます。実際、クラスの2割から3割程度の生徒が弁当持参という学校も珍しくありません。この柔軟性は、アメリカの個人の選択を重視する文化を反映しているとも言えるでしょう。さらに、アレルギーを持つ生徒の保護者にとっては、安全な食事を確保する手段として重要な選択肢となっています。

食事をする場所と時間

日本では教室で担任の先生と一緒に食べるのが一般的ですが、アメリカではカフェテリアで食べるのが基本です。カフェテリアは一般的に学校の中で最も広い空間の一つで、数百人の生徒が同時に食事をとれるよう設計されています。長テーブルとベンチシートが並び、まるで食堂やレストランのような雰囲気です。

教師は別室で食事を取ることが多く、代わりに監督員が交代で見守りを行います。これにより、給食時間は生徒同士の自由な交流の場となっています。天気の良い日は、屋外のテーブルで食べることができる学校も多くあります。特にカリフォルニアなど温暖な地域では、年間を通じて屋外での食事が可能です。また、食事時間は通常25分から30分程度で、この時間内で食事を終える必要があります。日本のようにゆっくりと食事を楽しむ文化とは異なり、比較的短時間で効率的に食事を済ませるスタイルが一般的です。

給食費の仕組みが大きく異なる

日本の給食費は月額制で前払いが基本ですが、アメリカではプリペイドカードやアプリを使って、食べた分だけ支払う仕組みが一般的です。2024年現在、朝食は2ドル前後、昼食は小学生で2.75ドル、中高生で3ドル前後が相場となっています。これは地域によって差があり、都市部ではより高額になる傾向があります。また、サイドメニューやデザートを追加する場合は別料金が発生します。

支払い方法は非常に現代的で、専用のアプリを通じて保護者がオンラインで入金を行うことができます。アプリでは残高確認だけでなく、子どもが何を食べたのかという購入履歴も確認できるため、食生活の管理にも役立ちます。また、現金での支払いも可能ですが、紛失や盗難のリスクを考慮して、多くの学校ではカードやアプリの使用を推奨しています。

栄養管理の考え方

日本の給食は文部科学省の定める基準に従い、栄養士が細かく計算して献立を作成します。一方、アメリカでは連邦政府が定める基本的な栄養基準を満たせば、あとは各学校区の判断に任されています。この基準には、タンパク質、炭水化物、脂質のバランスや、ビタミン、ミネラルの必要量が定められていますが、具体的なメニュー構成は各学校区の裁量となります。

そのため、同じ州内でも学校によって提供されるメニューの質に大きな差が出ることがあります。例えば、裕福な地域の学校では有機食材を使用したり、プロのシェフを雇用したりする一方で、予算の限られた学校では冷凍食品や加工食品に頼らざるを得ないという現実があります。また、近年は健康志向の高まりを受けて、全粒粉の使用や糖分・塩分の制限など、より厳格な栄養基準が導入されつつあります。

アメリカの給食制度の歴史と変遷

1946年の全国学校給食法制定まで

アメリカの学校給食は、1910年代のボランティアによる貧困児童への食事提供から始まりました。当時は1食3セントという低価格で、スープやパン、ミルクといった簡素な食事が提供されていました。1930年代の大恐慌時代には、農産物の余剰買い取り制度と結びつき、連邦政府による支援が本格化します。農家の経済的支援と子どもたちの栄養確保という二つの目的を達成する手段として、給食制度が注目されるようになったのです。

そして1946年、トルーマン大統領が全国学校給食法に署名し、現在の制度の基礎が作られました。この法律は「国家の安全保障の観点から、子どもたちの健康と福祉を守る」ことを目的として制定され、連邦政府による恒久的な資金援助を可能にしました。これにより、それまで地域によってばらつきのあった給食プログラムが、全国的な制度として確立されることになったのです。

1960年代以降の近代化

1960年代に入ると、アメリカの給食は大きな転換期を迎えます。現代のカフェテリアスタイルが確立され始め、効率的な大量調理システムが導入されました。この時期に画期的な出来事として、ピザが給食メニューに加わります。当初は斬新なメニューとして導入されたピザですが、たちまち子どもたちの人気メニューとなり、今では「金曜日のピザ」として定着するほどの定番メニューになりました。

1970年代には、マクドナルドやバーガーキングなどのファストフードチェーンが学校給食に参入し始めます。これにより選択肢は広がりましたが、同時に栄養面での懸念も出始めました。1980年代には連邦予算の削減により給食の質が低下し、「ケチャップを野菜として認定する」という話題を呼んだ出来事もありました。

健康志向への転換

2010年、オバマ政権下で「健康で空腹のない子どもたち法」が制定され、給食の栄養基準が大きく見直されました。この法律により、全粒粉の使用促進、野菜と果物の提供量増加、トランス脂肪の制限など、具体的な基準が設けられました。特に、ミシェル・オバマ大統領夫人による「Let’s Move!」キャンペーンは、子どもの肥満問題に焦点を当て、健康的な食生活を推進する大きな転換点となりました。

この改革により、フライドポテトは週に1回までに制限され、缶詰の果物は天然果汁使用のものに変更されるなど、具体的な変化が生まれました。また、学校菜園の推進や食育プログラムの導入など、食について学ぶ機会も増えています。ただし、これらの変更は一部の生徒や保護者から「おいしくない」「量が少ない」という批判も受けており、健康と満足度のバランスは現在も課題となっています。

州によって異なるアメリカの給食事情

無償化を実施する9つの州

2024年現在、カリフォルニア州、ニューメキシコ州、ミネソタ州など9つの州で、公立学校の給食が無償で提供されています。この動きは、新型コロナウイルスの影響で経済的困難を抱える家庭が増加したことを受けた措置です。これらの州では、朝食と昼食の両方が無料で提供され、家庭の所得に関係なく、すべての生徒が利用できます。この制度により、年間で一家庭あたり1,500ドル以上の経済的負担が軽減されると試算されています。

学区による運営の違い

アメリカでは学区ごとに給食を管理しているため、同じ州内でも提供されるメニューや価格が大きく異なります。都市部の大規模な学区では、専門の栄養士を雇用し、独自の調理施設を持つところもあります。一方、小規模な学区では、給食センターからの配送に頼ることが一般的です。この違いは、提供されるメニューの品質や多様性にも影響を与えています。

特に注目すべきなのは、地域の特性を活かした取り組みです。例えば、農業地域では地元の新鮮な農産物を活用したり、漁港近くでは地元の水産物を取り入れたりするなど、地域資源を活用した給食提供が行われています。また、移民が多い地域では、その地域のエスニック料理を取り入れるなど、文化的な多様性への配慮も見られます。

給食費と支援制度の詳細

プリペイドカードの仕組み

多くの学校で導入されているプリペイドカードシステムは、「My School Bucks」などのアプリと連携しています。このシステムでは、保護者がオンラインで入金を行い、子どもは専用のカードまたはID番号を使って決済を行います。アプリでは、残高確認だけでなく、日々の購入履歴や栄養摂取状況なども確認できるため、家庭での食育にも活用できます。

また、紛失や盗難のリスクを最小限に抑えるため、多くの学校では保護者がカードの利用限度額を設定できるようになっています。例えば、一日の利用上限を設定したり、特定のメニューの購入を制限したりすることも可能です。これにより、子どもの食事内容や出費を適切に管理することができます。

所得に応じた支援制度

連邦政府の基準により、世帯収入が一定額以下の家庭は、無料または割引価格で給食を受けられます。2024年の基準では、4人家族の場合、月収4,278ドル以下なら割引価格、3,007ドル以下なら無料となります。申請は学校年度の始めに行うことができ、年度途中での申請も可能です。また、失業や収入の大幅な減少など、家庭の状況が変化した場合は、随時申請することができます。

この支援制度は、子どもの貧困対策として重要な役割を果たしています。特に、朝食を提供する学校が増えていることで、家庭環境に関係なく、すべての子どもが一日を健康的にスタートできる環境が整いつつあります。一方で、支援を受ける際のスティグマ(負い目)を懸念する声もあり、多くの学校では支援を受けている生徒が特定されないような配慮を行っています。

最新動向と今後の展望

2024年4月発表の新基準

バイデン政権は2024年4月、2025年秋から実施される新しい給食基準を発表しました。この改革の中心となるのが、添加糖分の制限導入です。特に朝食での砂糖摂取量に注目が集まっており、シリアルやヨーグルトなどの主要な朝食メニューに新しい基準が設けられます。また、風味付き牛乳の糖分規制や、塩分の段階的削減なども計画されています。

この改革は約3000万人の児童に影響を与える大規模なものですが、2024年11月の大統領選挙の結果次第では、実施時期や内容が変更される可能性があります。給食政策は政権の教育・福祉政策を反映する重要な要素となっているためです。特に、共和党と民主党では給食に対する考え方に大きな違いがあり、政権交代によって方針が大きく変わる可能性があることには注意が必要です。

健康志向と地産地消の動き

各地で健康的なメニューへの移行が進んでいます。有機食材の使用や地元産の食材活用は、単なる健康志向だけでなく、地域経済の活性化にも貢献しています。特に注目されているのが学校菜園での取り組みです。生徒たちが野菜を育て、収穫し、それを給食で使用するという一連の体験は、食育の観点から高い評価を受けています。

また、環境への配慮も重要なテーマとなっています。使い捨ての容器や食器の削減、食品廃棄物の堆肥化、地域の農家との直接取引など、サステナビリティを意識した取り組みが増えています。これらの取り組みは、子どもたちの環境意識を育てる教育の機会としても活用されています。

まとめ:日本と全然違うアメリカの給食!

アメリカの給食は、日本の給食とは大きく異なるシステムで運営されています。これから留学や移住を考えている家庭の子ども子どもにとっては最初は戸惑うことも多いでしょう。特に、生野菜の多さや、パンを主食とするメニューの頻度の高さは、大きな変化となるかもしれません。しかし、メニューを選べる自由があり、弁当持参も可能なため、徐々に現地の食事に慣れていく方法を見つけることができるはずです!

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