2025.09.25
  • キッズ向けコラム

秋の季語一覧|俳句や手紙で使える美しい季節の言葉を分野ごとに紹介

学校の学習をちょっと深く学ぶためのテテトコエデュケーション。今回は俳句などで使われる季語についてです。

秋は日本の四季の中でも特に美しい季節として親しまれています。涼やかな風とともに訪れる秋には、紅葉や月見、収穫の喜びなど、心を豊かにしてくれる自然の営みが数多くあります。

俳句では、これらの秋の情景や心情を表現するために「季語」と呼ばれる特別な言葉を使います。季語は俳句に季節感を与え、短い17音の中に豊かな世界観を表現するために欠かせない要素です。

本記事では、秋の季語を分野別に詳しく紹介し、俳句作りや手紙の時候の挨拶で活用できる知識をお伝えします。

秋の季語とは

秋の時期と三秋の分類

俳句の世界では、立秋(8月8日頃)から立冬前日(11月6日頃)までを秋としています。この期間をさらに細かく分けて「三秋」と呼びます。

初秋(8月8日頃〜9月7日頃):まだ暑さが残るものの、秋の気配を感じ始める時期

仲秋(9月8日頃〜10月7日頃):秋らしさが深まり、月が美しく見える時期

晩秋(10月8日頃〜11月6日頃):冬の訪れを感じる、秋の終わりの時期

季語の7つの分類

秋の季語は、その内容によって以下の7つのカテゴリーに分けられます。

時候:季節感や時期を表す言葉

天文:空や天体、気象現象に関する言葉

地理:山川草木、土地の様子を表す言葉

生活:衣食住や日常の営みに関する言葉

行事:秋に行われる祭りや行事に関する言葉

動物:秋に活動が盛んになる生き物の言葉

植物:秋に咲く花や実る植物の言葉

【時候】秋の気候・時期を表す季語

秋の時候を表す季語は、季節の移ろいとともに変化する気温や空気感を表現します。残暑から始まり、やがて肌寒さを感じるまで、秋の深まりとともに変化していく様子が美しく表現されています。

三秋(秋全体)で使える時候の季語

季語読み方意味・特徴
あき秋という季節そのものを表す基本的な季語
爽やかさわやか秋の清々しく心地よい気候を表現
身に入むみにしむ秋の冷たく物寂しい気配が体に染みること
夜長よなが秋になって夜が長くなることを表現
秋気しゅうき秋特有の大気の感じ、秋らしい空気感

初秋の時候季語

季語読み方意味・特徴
残暑ざんしょ立秋後もなお続く夏の暑さ
新涼しんりょう初秋に感じる新しい涼しさ
初秋しょしゅう秋の始まりの時期を表す
立秋りっしゅう二十四節気の一つ、暦の上での秋の始まり
処暑しょしょ暑さが収まる頃という意味の節気

仲秋の時候季語

季語読み方意味・特徴
仲秋ちゅうしゅう秋の中頃、最も秋らしい時期
秋分しゅうぶん昼夜の長さが等しくなる秋分の日
秋彼岸あきひがん秋分の日を中心とした一週間

晩秋の時候季語

季語読み方意味・特徴
秋深しあきふかし秋が深まり、冬の足音が聞こえる頃
晩秋ばんしゅう秋の終わり、冬間近の時期
冬隣ふゆとなり冬がすぐそこまで来ている状態
朝寒あささむ朝方に感じる寒さ
夜寒よさむ夜に感じる肌寒さ

【天文】空・天体・気象の季語

秋の空は澄み渡り、月や星が美しく見える季節です。台風や霧、露など、秋特有の気象現象も多く、これらを表現する季語が豊富に揃っています。

三秋の天文季語

季語読み方意味・特徴
つき秋の月は特に美しいとされる代表的な季語
秋晴あきばれ秋の清々しい晴天
きり秋の朝夕に発生する美しい霧
つゆ草花に宿る美しい露、秋の風情を象徴
稲妻いなずま秋の雷光、稲を実らせると信じられていた
秋の空あきのそら高く澄み切った秋の空
秋風あきかぜ涼しく心地よい秋の風

初秋の天文季語

季語読み方意味・特徴
天の川あまのがわ七夕の頃に美しく見える天の川
二つ星ふたつぼし織姫と彦星を指す
盆の月ぼんのつきお盆の頃の月

仲秋の天文季語

季語読み方意味・特徴
名月めいげつ旧暦8月15日の満月、中秋の名月
台風たいふう秋に日本を襲う強い熱帯低気圧
野分のわき秋の暴風、台風の古い呼び名
十六夜いざよい満月の翌日の月
立待月たちまちづき立って待つ間に昇る月

晩秋の天文季語

季語読み方意味・特徴
秋の霜あきのしも晩秋の朝に降りる白い霜
露寒つゆさむ露が冷たく感じられる頃
後の月のちのつき旧暦9月13日の月

【植物】秋の花・木・実の季語

秋は「実りの秋」と呼ばれるように、多くの植物が花を咲かせ、実を結ぶ季節です。紅葉の美しさとともに、秋の七草や様々な果実が季語として親しまれています。

三秋の植物季語

季語読み方意味・特徴
秋の七草あきのななくさ萩・桔梗・葛・撫子・女郎花・藤袴・芒
きく秋を代表する花、長寿の象徴
すすき秋の野に揺れる美しい草、尾花とも呼ばれる
秋草あきくさ秋に咲く草花の総称
草の花くさのはな秋の野草の花々
鶏頭けいとう鶏の鶏冠に似た赤い花
椎茸しいたけ秋の味覚を代表するキノコ

初秋の植物季語

季語読み方意味・特徴
はぎ秋の七草の一つ、小さな紫の花が美しい
桔梗ききょう秋の七草の一つ、青紫の星形の花
女郎花おみなえし秋の七草の一つ、黄色い小花を咲かせる
藤袴ふじばかま秋の七草の一つ、淡い紫色の花
芙蓉ふよう朝に咲いて夕方には散る一日花
鳳仙花ほうせんか赤やピンクの美しい花、爪紅で有名
朝顔あさがお夏の印象が強いが俳句では秋の季語

仲秋の植物季語

季語読み方意味・特徴
コスモスこすもす秋桜とも書く、秋の代表的な花
紫苑しおん薄紫の美しい花を咲かせる
彼岸花ひがんばなお彼岸の頃に咲く真っ赤な花、曼珠沙華
石榴ざくろ赤い実がはじけて種子を見せる
初紅葉はつもみじ紅葉の始まり、葉が色づき始める頃
野菊のぎく野に咲く小さな菊の花

晩秋の植物季語

季語読み方意味・特徴
紅葉もみじ晩秋の美しい紅葉、山々を彩る
かき晩秋の代表的な果実、日本の秋の風物詩
くり秋の味覚の代表、栗ご飯でおなじみ
松茸まつたけ秋の高級食材、香り豊かなキノコ
銀杏ぎんなんイチョウの実、黄金色に輝く葉も美しい
木犀もくせい金木犀の甘い香りは秋の風物詩
残菊ざんぎく晩秋まで咲き続ける菊の花
山梨やまなし山に自生する梨、秋の山の恵み

【動物・虫】秋に活動する生き物の季語

秋は多くの虫たちが美しい鳴き声を響かせる季節です。また、渡り鳥が南へ向かい、魚たちも美味しい時期を迎えます。これらの生き物たちの営みも季語として大切に扱われています。

三秋の動物季語

季語読み方意味・特徴
むし秋に鳴く虫の総称、虫の声は秋の風物詩
赤蜻蛉あかとんぼ秋空を舞う赤いトンボ、童謡でもおなじみ
蟋蟀こおろぎ美しい鳴き声で秋の夜を彩る
鹿しか秋に鳴き声が美しく響く、紅葉の山の住人
渡り鳥わたりどり秋に南へ向かう鳥たち
もず秋に鳴く小鳥、獰猛な性格で有名

初秋の動物季語

季語読み方意味・特徴
鈴虫すずむしリンリンと美しい鈴のような声で鳴く
松虫まつむしチンチロリンと鳴く虫、風流な鳴き声
螽蟖きりぎりすギーッチョンと鳴く、秋の代表的な虫
轡虫くつわむしガチャガチャと轡のような音で鳴く
蟷螂かまきり鎌のような前脚を持つ緑の昆虫
ひぐらしカナカナと夕暮れに鳴くセミ

仲秋の動物季語

季語読み方意味・特徴
かりV字型の編隊で南へ飛ぶ渡り鳥の代表
さけ産卵のため川を遡上する、秋の味覚
小鳥ことり秋に活動的になる小さな鳥たち
燕帰るつばめかえる春に来た燕が南へと帰っていく
初鴨はつかも秋の初めに飛来する鴨

晩秋の動物季語

季語読み方意味・特徴
秋刀魚さんま秋の代表的な魚、脂がのって美味
鶴来るつるくる冬を前に日本に飛来する鶴
いのしし秋の山で活動的になる野生動物
残る虫のこるむし晩秋まで鳴き続ける虫たち
木葉山女このはやまめ紅葉の季節に美味しくなる川魚

【生活・行事】秋の暮らしと行事の季語

秋は収穫の季節であり、様々な行事や生活の営みが季語として表現されています。運動会や月見、紅葉狩りなど、現代でも親しまれている行事も多く含まれています。

三秋の生活・行事季語

季語読み方意味・特徴
運動会うんどうかい秋の学校行事の代表、現代でも一般的
案山子かかし田んぼに立てる鳥除け、秋の田園風景
新米しんまいその年に収穫された新しいお米
秋祭あきまつり収穫を祝う秋の祭り
鳴子なるこ鳥を追い払うための農具
夜食やしょく夜長の秋に食べる夜食

初秋の生活・行事季語

季語読み方意味・特徴
七夕たなばた旧暦7月7日の星祭り、織姫と彦星の物語
盆踊ぼんおどりお盆の時期に踊る伝統的な踊り
墓参はかまいりお盆の時期の先祖供養
燈籠流しとうろうながし精霊を送る美しい行事
送り火おくりび精霊を送るための火、京都の大文字が有名

仲秋の生活・行事季語

季語読み方意味・特徴
月見つきみ中秋の名月を愛でる風雅な行事
稲刈いねかり秋の収穫作業、日本の原風景
敬老の日けいろうのひお年寄りを敬う現代の祝日
豊年ほうねん作物の豊作を祝う

晩秋の生活・行事季語

季語読み方意味・特徴
紅葉狩もみじがり美しい紅葉を見に行く秋の楽しみ
菊花展きっかてん菊の花を鑑賞する秋の催し
茸狩きのこがりキノコを採りに山へ行くこと
新酒しんしゅその年に作られた新しいお酒
新蕎麦しんそばその年の新そば粉で作った蕎麦
文化の日ぶんかのひ現代日本の晩秋の祝日
七五三しちごさん子どもの成長を祝う11月の行事

小学生向け|覚えやすい秋の季語

俳句を始めたばかりの小学生や初心者の方でも使いやすい、身近で覚えやすい秋の季語をご紹介します。これらの季語は日常生活でもよく目にするものばかりです。

(つき)、紅葉(もみじ)、(くり)、(かき)、コスモス(こすもす)、赤とんぼ(あかとんぼ)、すすき(すすき)、運動会(うんどうかい)、稲刈り(いねかり)、(きく)

秋の季語を使った俳句作りのコツ

季語と情景の組み合わせ

秋の季語を使って俳句を作る際は、季語が持つ情景や季節感を大切にしましょう。例えば「月」という季語を使う場合、秋の澄んだ夜空に浮かぶ美しい月の情景を思い浮かべ、それに合う言葉を組み合わせます。

五感を使った表現

秋の季語は五感に訴える表現が豊富です。虫の鳴き声(聴覚)、紅葉の美しさ(視覚)、新米の香り(嗅覚)、柿の甘さ(味覚)、肌寒さ(触覚)など、様々な感覚を活用して表現の幅を広げましょう。

時間の経過を意識する

秋は移ろいの季節です。初秋から晩秋にかけて変化していく自然や人の心情を、季語を通して表現すると深みのある俳句になります。

手紙で使える秋の時候の挨拶

秋の季語は俳句だけでなく、手紙の時候の挨拶でも活用できます。相手に季節感を伝える美しい表現として重宝します。

初秋(8月〜9月前半)の挨拶例

残暑の候、いかがお過ごしでしょうか

新涼の季節となりました

立秋とは名ばかりの暑さが続いております

仲秋(9月後半〜10月前半)の挨拶例

秋風が心地よい季節となりました

中秋の名月が美しい頃となりました

コスモスが風に揺れる季節です

晩秋(10月後半〜11月)の挨拶例

紅葉が美しく色づく季節となりました

朝寒の候、お元気でお過ごしでしょうか

晩秋の風情を感じる頃となりました

秋の季語の歴史と文化的背景

秋の季語の多くは、古くから日本人の生活や文化に深く根ざしています。平安時代の『万葉集』や『古今和歌集』には、既に多くの秋の季語が歌に詠まれており、日本人の季節感の豊かさを物語っています。

秋の七草の由来

秋の七草は、奈良時代の歌人・山上憶良が万葉集で詠んだ歌が起源とされています。「萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花」として歌われ、現在まで受け継がれています。

月見の文化

月見の風習は中国から平安時代に伝わったとされ、貴族の間で風雅な行事として定着しました。現在でも旧暦8月15日の中秋の名月を愛でる習慣として親しまれています。

現代生活に息づく秋の季語

古典的な季語の多くは現代でも生活の中で見ることができます。運動会は現代の学校行事として定着し、紅葉狩りは観光の楽しみとして親しまれています。また、新米や秋刀魚などの食材は、現代でも秋の味覚として愛され続けています。

都市部でも楽しめる秋の季語

都市部に住む人々も、公園の紅葉や街角の金木犀の香り、夜に聞こえる虫の声など、多くの秋の季語を身近に感じることができます。現代の俳句作りでは、こうした都市の中の自然も大切な題材となっています。

季語を学ぶための参考資料

秋の季語をより深く学ぶためには、以下のような資料が役立ちます。

歳時記:季語を体系的にまとめた辞典。角川歳時記や講談社歳時記などが有名です。

俳句雑誌:現代の俳人による作品を通して、季語の使い方を学べます。

古典作品:松尾芭蕉や与謝蕪村など、古典俳人の作品から季語の伝統的な使い方を学べます。

自然観察:実際に自然を観察することで、季語の背景にある現象を直接体験できます。

まとめ

秋の季語は、日本の美しい秋の情景や人々の暮らしを表現する豊かな言葉の宝庫です。時候・天文・植物・動物・生活・行事の各分野にわたって多彩な季語があり、それぞれが深い意味と美しい響きを持っています。

俳句作りでは、これらの季語を効果的に使うことで、短い17音の中に豊かな世界観を表現できます。また、手紙の時候の挨拶でも、季語を使った表現は相手に季節感と文化的な教養を伝える素晴らしい手段となります。

初心者の方は、まず身近な季語から始めて、徐々にレパートリーを増やしていくことをおすすめします。秋の自然を五感で感じながら、美しい日本語の季語を通して、豊かな表現力を身につけてください。

秋の季語を学ぶことは、日本の文化や自然への理解を深めることでもあります。季語を通して、先人たちが大切に育んできた季節感や美意識に触れ、現代に生きる私たちも豊かな感性を磨いていきましょう。

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