2024.11.20
  • 子育てコラム

子どもの予防接種の種類一覧 – 小学校入学までに受けるのは?

※こちらの記事は2024年11月時点の情報に基づいて作成されています。記事作成にあたって、厚生労働省および日本小児科学会が発信している内容を参考にしています。

子供の健康を守るために欠かせない予防接種。特に未就学児の時期は、様々な種類の予防接種を計画的に受ける必要があります。この記事では、生後から就学前までに受ける予防接種について、種類別に詳しく解説していきます。

生後2ヶ月から始まる予防接種

五種混合ワクチン

ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、ヒブ(インフルエンザ菌b型)の5つの重要な感染症を予防するワクチンです。2024年4月から導入された新しい予防接種で、生後2ヶ月から開始します。4回の接種(初回3回、追加1回)が必要。特に百日せきの予防のため、なるべく早く接種を開始することが推奨されています。

ジフテリアの症状

のどや鼻の粘膜に感染する重篤な細菌感染症です。発熱や喉の痛み、首の腫れが特徴で、重症化すると気道が塞がれて呼吸困難になることがあります。

百日咳の症状

特徴的な咳の発作が長期間(約100日)続く感染症です。乳児期の感染では呼吸困難や無呼吸発作を起こすことがあり、特に生後6ヶ月未満では重症化しやすくなります。

破傷風の症状

傷口から感染し、全身の筋肉が硬直して重症な痙攣を引き起こします。新生児が感染すると特に危険で、適切な治療を行っても死亡率が高い病気です。

ポリオの症状

手足の麻痺を引き起こすウイルス感染症です。重症化すると永続的な麻痺が残ることがあり、呼吸筋が麻痺すると生命の危険もあります。

ヒブ感染症の症状

髄膜炎や敗血症、肺炎などを引き起こす細菌感染症です。特に5歳未満の子供で発症リスクが高く、髄膜炎を発症すると重い後遺症が残ることがあります。

B型肝炎ワクチン

B型肝炎ウイルスによる肝臓の感染症を予防するワクチンです。生後2ヶ月から接種を開始し、3回の接種(初回2回、追加1回)が必要です。母親がB型肝炎キャリアの場合は、出産直後から特別なスケジュールでの接種が必要となります。

B型肝炎の症状

発熱、倦怠感、食欲不振、黄疸などが現れます。特に乳幼児期の感染は気付かないうちに慢性化しやすく、その後の肝硬変や肝がんの原因となる可能性があります。

ロタウイルスワクチン

乳幼児の重症胃腸炎の主な原因となるロタウイルスの感染を予防するワクチンです。生後2ヶ月から接種を開始する経口ワクチンで、「ロタリックス」(2回接種)と「ロタテック」(3回接種)の2種類があります。初回接種は生後14週6日までに行う必要があります。

ロタウイルス感染症の症状

激しい嘔吐と水様性の下痢が特徴で、脱水症状を引き起こします。特に生後6ヶ月から2歳までの乳幼児は重症化しやすく、けいれんや脳症などの症状を伴うこともあります。

小児用肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌による重症感染症を予防するワクチンです。生後2ヶ月から開始し、4回の接種(初回3回、追加1回)が必要です。2024年10月からより効果の高い20価ワクチンが導入されました。

肺炎球菌感染症の症状

髄膜炎(発熱、頭痛、嘔吐、意識障害)、敗血症(全身の重篤な症状)、肺炎(高熱、咳、呼吸困難)など、様々な重症感染症を引き起こします。特に2歳未満の乳幼児は重症化しやすくなっています。

生後5ヶ月以降の予防接種

BCGワクチン

結核を予防するためのワクチンです。生後5ヶ月頃から接種する予防接種で、1回の接種で完了し、スタンプ方式で行われます。1歳になる前までは公費(無料)で接種可能です。最近は個別接種も増えており、その場合は他のワクチンとの同時接種も可能です。

結核の症状

2週間以上続く咳、発熱、体重減少、寝汗などが特徴的な症状です。乳幼児は重症化しやすく、全身に広がる粟粒結核や結核性髄膜炎を引き起こすリスクが高くなります。

1歳からの予防接種

MRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)

麻しん(はしか)と風しんの2つの感染症を予防するワクチンです。1歳の誕生日を迎えたらすぐに1回目を受け、2回目は小学校入学前の年に接種します。感染力の強い疾病のため、決められた時期での確実な接種が重要です。

麻しんの症状

38度以上の高熱、咳、鼻水、目の充血に続き、特徴的な発疹が全身に広がります。合併症として中耳炎、肺炎、脳炎を引き起こすことがあり、特に脳炎は重篤な後遺症の原因となります。

風しんの症状

発熱と発疹、首のリンパ節の腫れが特徴です。まれに脳炎や血小板減少性紫斑病などの合併症を引き起こします。特に妊娠初期の女性が感染すると、胎児が先天性風しん症候群を発症する可能性があります。

水痘(みずぼうそう)ワクチン

水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症を予防するワクチンです。1歳から接種可能で、2回の接種が必要です。MRワクチンやおたふくかぜワクチンとの同時接種も可能で、できるだけ早期の接種が推奨されています。

水痘の症状

軽度の発熱とともに、全身に赤い発疹が現れ、水疱、かさぶたへと変化していきます。強いかゆみを伴い、引っかくことで傷跡が残ったり細菌感染を起こすことがあります。まれに肺炎や脳炎などの重い合併症を引き起こします。

おたふくかぜワクチン

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)を予防するワクチンです。1歳から接種可能で、2回の接種が推奨されています。任意接種ですが、重要な予防接種の一つとして推奨されています。他の1歳児に推奨されるワクチンとの同時接種が可能です。

おたふくかぜの症状

耳の下の唾液腺が腫れ、痛みを伴います。発熱、頭痛、食欲不振も現れます。合併症として無菌性髄膜炎、難聴、睾丸炎などを引き起こすことがあり、特に思春期以降の罹患では合併症のリスクが高くなります。

日本脳炎ワクチン

蚊を媒介として感染する日本脳炎を予防するワクチンです。標準的には3歳から接種を開始しますが、必要に応じて生後6ヶ月から接種することも可能です。基礎免疫として3回(初回2回、追加1回)の接種が必要で、さらに9歳で4回目の接種を行います。

日本脳炎の症状

高熱、頭痛、嘔吐などの初期症状に続き、意識障害、けいれん、麻痺などが現れます。感染者の約20~30%が死亡し、回復しても重い後遺症が残ることがあります。特に乳幼児は重症化しやすい傾向にあります。

同時接種について

予防接種の多くは同時接種が可能です。特に生後2ヶ月から始まる予防接種(五種混合、B型肝炎、ロタウイルス、小児用肺炎球菌)は、同時接種することで接種回数を減らすことができます。ただし、同時接種の可否は医療機関によって異なる場合があるため、事前に確認が必要です。

予防接種を受ける際の注意点

体調管理について

予防接種は、お子様の体調が良好な時に受けることが大切です。接種前には体温測定を行い、37.5度以上の発熱がある場合や体調不良が見られる場合は、接種を延期する必要があります。また、予防接種後は激しい運動を避け、接種部位を清潔に保つことが推奨されます。

接種間隔の確認

生ワクチン(BCG、MR、水痘、おたふくかぜ、ロタウイルス)を接種した後は、次の予防接種までに27日以上の間隔を空ける必要があります。不活化ワクチン(五種混合、B型肝炎、小児用肺炎球菌など)の場合は、6日以上の間隔が必要です。医療機関と相談しながら、適切な接種間隔を確保しましょう。

予防接種のスケジュール管理

母子手帳の活用

予防接種の記録は母子手帳に確実に記入することが重要です。接種日や次回の予定を記入し、必要な接種が抜け落ちないよう管理しましょう。特に複数回の接種が必要なワクチンは、次回の接種時期を事前に確認しておくことが大切です。

かかりつけ医との相談

お子様の体調や生活環境に応じて、標準的な接種スケジュールを調整する必要が出てくる場合もあります。かかりつけ医と相談しながら、お子様に最適な接種スケジュールを組み立てていきましょう。

医療機関の選び方

予防接種は主に以下の医療機関で受けることができます:

かかりつけ医院・小児科

最も一般的な接種場所です。日頃からお子様の健康状態を把握している医師に相談しながら接種できる利点があります。

各市区町村の保健センター

定期的に集団接種を実施している自治体も多く、予約制で受けることができます。費用面でも公的機関ならではの配慮があります。

予防接種実施医療機関として指定された病院

自治体から指定を受けた医療機関では、定期接種を公費で受けることができます。ただし、指定医療機関は自治体によって異なります。

医療機関の変更について

同じワクチンの接種であっても、1回目と2回目で医療機関を変更することは可能です。以下の点に注意が必要です:

母子手帳の接種記録の確認

前回の接種日、ワクチンのロット番号、接種量などが正確に記載されていることを必ず確認しましょう。これらの情報は次回接種の判断に重要です。

予防接種履歴の伝達

新しい医療機関では、過去の接種歴や副反応の有無を正確に伝えることが安全な接種につながります。特にアレルギー歴は必ず報告してください。

助成制度の確認

市区町村をまたいで医療機関を変更する場合、予防接種の助成制度が異なることがあります。事前に両方の自治体に確認することで、予期せぬ自己負担を防げます。

医療機関を変更する場合は、母子健康手帳、予防接種予診票、健康保険証などの必要書類を新しい医療機関に持参します。特に母子健康手帳は接種間隔の確認に重要なため、必ず持参しましょう。

予防接種を忘れた場合の対処法

予防接種を忘れていたことに気づいたら、できるだけ早く医療機関に相談することが大切です。多くのワクチンは接種可能ですが、ワクチンの種類によって対応が異なります。

定期接種を忘れた場合

法定接種期間内であれば公費での接種が可能です。標準的な接種期間を忘れて過ぎてしまっても、定期接種期間内なら無料で接種できます。

期限のあるワクチンを忘れた場合

ロタウイルスワクチンなど、一部のワクチンには厳密な接種期限があります。「ロタリックス」は生後24週まで、「ロタテック」は生後32週までに完了が必要で、この期限を忘れて過ぎると接種できなくなります。

未就学児の予防接種一覧表

ワクチン名 予防する病気 接種開始時期 接種回数 種類 接種方法
五種混合 ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、ヒブ感染症 生後2ヶ月 4回(初回3回、追加1回) 不活化 注射
B型肝炎 B型肝炎 生後2ヶ月 3回(初回2回、追加1回) 不活化 注射
ロタウイルス ロタウイルスによる胃腸炎 生後2ヶ月 2回または3回(種類による) 経口
小児用肺炎球菌 肺炎球菌による肺炎、髄膜炎、敗血症 生後2ヶ月 4回(初回3回、追加1回) 不活化 注射
BCG 結核 生後5ヶ月 1回 スタンプ式
MR(麻しん風しん混合) 麻しん(はしか)、風しん 1歳 2回 注射
水痘 水痘(みずぼうそう) 1歳 2回 注射
おたふくかぜ 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ) 1歳 2回 注射
日本脳炎 日本脳炎 3歳 4回(基礎3回、追加1回) 不活化 注射

※この表は2024年4月現在の情報に基づいています。予防接種制度は定期的に更新されることがありますので、最新情報は医療機関でご確認ください。

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