2024.03.10
  • コラム

子供が物を並べるのは自閉症の兆候?物並べの意味と健常児との違い

幼い子どもが物を並べて遊ぶ姿を見て「うちの子、自閉症かも…」と不安を覚えたママやパパもいるかもしれませんね。確かに、物を並べる行動は自閉症の特徴の一つとして知られています。

ただ、この行動は多くの健常児にも見られる、ごく自然なものです。子どもの発達を見守る上で、物を並べる行動の意味を正しく理解しておくことが大切です。こうした行動をどう捉え、子どもにどう接していけばよいのか、考えていきましょう。

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物を並べる行動の意味と目的

子どもが物を並べるのには、いくつかの意味と目的があります。発達段階に応じた、ごく自然な行動と言えるでしょう。

秩序を作り出すことで安心感を得る

幼い子どもにとって、身の回りの物を整理整頓することは、大きな安心感につながります。例えば、2歳の男の子がトミカを一列に並べて満足そうにしている姿を想像してみてください。「ここにはスポーツカー、こっちにはトラック」と、自分なりのルールで分類し、秩序ある世界を作り上げているのです。これは、自分の周りの環境をコントロールしているという実感を得る、幼児期ならではの遊びと言えます。

視覚的な美しさを楽しむ

色とりどりのブロックを虹色に並べたり、大小さまざまな人形を背の順に並べたり。子どもは並べる行為そのものを楽しんでいるようにも見えます。これは、視覚的な美しさへの感性が芽生え始めている証拠。「きれいだね」「素敵だね」と、子どもの創造性を認め、一緒に喜ぶことも大切です。

集中力を高め、学びにつなげる

物を並べるには、集中力が欠かせません。目と手を協調させ、その子なりにトライ&エラーを繰り返しながら、理想の並べ方を完成させる。これは知的な学びの基礎となる力を養っていると言えます。「あと一つ、ちょうどいいサイズのパーツはないかな」と、夢中になって探す姿は、問題解決力の芽生えと言えるかもしれません。

物を並べる遊びの発達的意義

物を並べる遊びは、子どもの成長に様々な意義をもたらします。単なる「くり返し」ではなく、大切な学びの機会となっているのです。

微細運動能力の発達を促す

小さなおもちゃを手で掴み、慎重に並べる行為は、手指の器用さを高めることにつながります。将来、お箸を使ったり、ボタンをかけたりする時に役立つ力を、遊びの中で自然と身につけているのです。

実際、3歳の女の子がパズルのピースを真剣な表情で並べている姿を想像してみてください。ピースを拾い、向きを変え、隙間なくはめ込む。その一連の動作には指先の器用さが求められます。これは微細運動能力の発達そのものと言えるでしょう。

空間認知力を養う

物を並べる過程で、子どもは空間認識力を養います。「大きいものは後ろ、小さいものは前」など、位置関係への理解が深まるのです。パズルや将来的には算数の図形問題などに挑戦する際にも、この力が生きてくるはずです。

分類する力を身につける

色、形、大きさなどの特徴に応じて物を分類する。これは論理的思考の基礎となる力です。3歳の男の子が、大好きなヒーローのフィギュアを「味方」と「敵」に分けて並べているとしましょう。これは、テレビで得た知識を活用し、自分なりの基準で分類する力の表れです。並べ方のルールを説明できるようになれば、言語能力の発達も期待できます。

創造性や表現力を育む

物を並べるには、イメージする力も必要です。「お城を作りたい」「お店屋さんごっこがしたい」など、子どもなりのビジョンを形にしていく。これは創造性を育む大切な過程なのです。出来上がった作品を見て、「すごいね、これって何を作ってるの?」と聞いてみましょう。最初はどんなにたどたどしくても、言葉で表現する力も少しずつ身についていくはずです。

健常児が物を並べる場合と自閉症児が物を並べる場合の違い

ここまで見てきたように、物を並べる行為自体は健常児にもよく見られるもの。では、自閉症児の物並べとはどう違うのでしょうか。

こだわりの強さと柔軟性

自閉症児の物並べは、こだわりが非常に強い場合が見られます。いつも決まった順番で並べないと気が済まなかったり、他の子に並べ方を変えられると激しく怒ったりすることがあります。これに対し、健常児の場合は、極度に強いこだわりが見られることは少なめです。

他の遊びへの移行のしやすさ

健常児は、物並べから他の遊びへの切り替えがスムーズな場合が多いです。一方、自閉症児の場合は、物を並べる遊びに強く没頭し、他の遊びに切り替えることが難しい場合があります。「遊びのレパートリーの少なさ」が、自閉症の特徴の一つと言えるでしょう。

コミュニケーションへの影響

物を介したやり取りは、コミュニケーション能力の発達に大きな意味を持ちます。健常児は、様々な遊びを通じて周囲とコミュニケーションを取り、社会性を育んでいく。対して自閉症児の中には、特定の遊びに没頭するあまり、周りとのコミュニケーションが疎かになる子もいます。これは、自閉症の特徴の一つです。

ただし、これらはあくまで一般的な傾向であり、個人差が大きいことも事実です。そして、未就学児などまだそもそもの発達にバラツキがある年代であれば、どちらかと断定することは非常に難しいのです。

健常児の中にも没頭しがちな子はいて、自閉症児の中にも柔軟に遊べる子はいます。物並べの特徴だけで、安易に自閉症を判断するのは危険だと言えるでしょう。

物並べ行動だけで自閉症とは判断できない理由

「うちの子、物ばかり並べているけど大丈夫かな…」という不安を感じる親御さんも多いことでしょう。でも、物を並べる行動が見られるからといって、それだけで自閉症と判断することはできません。以下のような理由から、慎重な見極めが必要なのです。

多くの健常児にも見られる行動である

繰り返しになりますが、物を並べるのは健常児にもよくある行動です。特に1歳半から5歳ごろは、こうした遊びが盛んな時期。一時的にブロックや人形を並べることに夢中になっても、それは発達段階に応じた自然な姿と言えるでしょう。

実際、2歳の女の子がお人形を床に一列に並べているとします。周りの大人から見れば「同じことの繰り返しでは?」と思えるかもしれません。でも子どもは、お人形たちの位置関係を意識したり、色の組み合わせを考えたりしながら、真剣に遊んでいるのです。それ自体に、大きな意味があるのです。

子どもの発達の全体像を見る必要がある

自閉症の診断には、物並べ以外の様々な特徴を総合的に判断する必要があります。例えば、アイコンタクトの取り方、言葉の発達、感情表現の仕方など。「うちの子、物は並べるけど、言葉もよく話すし、私の顔をよく見てくれる、会話もスムーズ」という子どもなら、自閉症の可能性は下がります。

大切なのは、子どもの行動を丁寧に観察し、発達の全体像を捉えること。一つの行動だけにとらわれず、子どもの強みや良さも含めてトータルに見ていく姿勢が求められます。

一時的な物並べと持続的なこだわりの違い

健常児の物並べは、ある時期に突然現れ、しばらくすると自然に収まっていくことが多いもの。一方、自閉症児の場合は、物並べへのこだわりが長期間続くことがあります。何年間も同じような行動が見られたり、他の遊びに移行しづらかったり。こうした「持続性」が、自閉症の可能性を示唆するサインと言えます。

ただし、あくまで可能性の話であり、個人差が大きいことも忘れてはいけません。物並べへのこだわりが強い子が全て自閉症というわけではありませんし、逆に物並べをしない自閉症児もいます。子ども一人ひとりの特性を丁寧に見ていくことが何より大切なのです。

物を並べる子どもへの接し方のポイント

子どもが物を並べて遊ぶ姿を見て、親はどう関わっていけばよいのでしょうか。子どもの気持ちを受け止めつつ、適切な刺激を与えていくための接し方のポイントを見ていきましょう。

子どもの気持ちを肯定的に受け止める

まずは、子どもの行動を肯定的に受け止めること。「ただ並べているだけ」と決めつけず、「これが今の○○ちゃんの興味なんだね」と共感的に理解する姿勢が大切です。「すごいね」「きれいに並べたね」と、子どもの頑張りを認めてあげましょう。子どものモチベーションを高め、達成感につなげることができます。

例えば、4歳の男の子が色とりどりのブロックを、虹のように並べているとします。「何の並べ方かな?」と聞いてみましょう。「虹だよ」と答えが返ってきたら、「すごいね!青、緑、黄色って、順番に並んでいるね」と、子どもの創造性や観察眼を褒めてあげましょう。子どもは、自分の世界を認めてもらえる喜びを感じるはずです。

他の遊びへの展開を促す

物並べ一辺倒にならないよう、他の遊びへの展開を促すことも大切です。例えば、並べたミニカーを「ブーブー」と走らせてみたり、積み木で作った建物に人形を住まわせたり。子どもの想像力を刺激しながら、遊びの幅を広げていける関わり方を心がけましょう。

4歳の女の子がお人形を並べているとしましょう。「お人形さん、何のお茶を飲んでいるのかな?」と話しかけてみてください。すると、「ストロベリーティーだよ」などと、子どもなりのストーリーが生まれるかもしれません。そこから「ケーキも用意しようか」と提案すれば、ごっこ遊びへと発展します。物並べから一歩先の遊びへと導いていけるのです。

安心して遊べる環境づくりを工夫する

子どもが集中して物を並べられるよう、環境づくりを工夫することも重要です。例えば、人通りが多くて並べた物が崩れてしまう場所は避け、広くて静かなスペースを確保する。子どもが安心感を持って遊べる「特等席」を用意してあげましょう。

また、素材や形、色など、バリエーション豊かなおもちゃを揃えるのもおすすめです。パズルやブロック、色鉛筆など、創造性を刺激するアイテムを用意すれば、子どもの「並べる」意欲をさらに引き出せるかもしれません。「今日は何を使って並べようかな?」と、子ども自身が選択する楽しみも味わえるでしょう。

子どものペースに合わせて見守る

物を並べる遊びは、子どもなりのペースで進められるもの。時には1時間以上も集中し続けることがあるかもしれません。大人からすれば「飽きないの?」と思うかもしれませんが、子どもにとっては貴重な探究の時間なのです。性急に「もう終わり?」と催促せず、子どものペースに合わせて見守ることが大切です。

ただし、食事や睡眠などの生活リズムを大切にすることも忘れてはいけません。「あと5分したら、ご飯にしようね」と、切り上げ時間を予告しておくと良いでしょう。子どもは「あと少しだけ」と集中力を高められるかもしれません。物並べに没頭する楽しさと、メリハリのある生活。その両立を図ることが、親の役目だと言えます。

自閉症の可能性が気になったら専門家に相談

ここまで見てきたように、物を並べる行為だけで自閉症と判断することはできません。しかし、その行動が極端に多かったり、他の遊びに全く興味を示さなかったりする場合は、自閉症の可能性を視野に入れる必要があるでしょう。「子どもの発達が気になる」と感じたら、小児科や発達クリニックに相談してみることをおすすめします。

小児科や発達クリニックでの発達評価

小児科や発達クリニックでは、発達の専門家が子どもの行動を詳しく観察し、評価を行います。物並べだけでなく、コミュニケーションや社会性、言語発達など、様々な角度から子どもの発達を見立てていくのです。親の悩みや心配事にも耳を傾け、丁寧にアドバイスしてくれるはずです。

例えば、「うちの子、ミニカーを1時間も2時間も並べ続けるんです…」と相談したとしましょう。医師や心理士は、物並べ以外の行動も詳しく尋ねます。アイコンタクトは取れているか、言葉の遅れはないか、指差しはするか、他児と遊べるか…。
そうした情報を総合し、自閉症の可能性を判断していくのです。必要に応じて発達検査を行い、客観的なデータも参考にします。

診断の有無に関わらず子どもに寄り添う

ただし、診断がついたからといって、子育ての方向性が大きく変わるわけではありません。自閉症のあるなしに関わらず、子どものありのままを受け止め、その特性に寄り添っていくこと。それが何より大切なのです。我が子の良さを信じ、長所を伸ばしていく。そんな前向きな子育ての姿勢を持ち続けたいですね。

健常児と分かって安心したら

一方、専門家に相談した結果「特に心配ありません」と言われたら、それはそれで安心材料になるでしょう。でも、だからといって「何もしなくていい」というわけではありません。むしろ、我が子の成長をしっかり喜び、可能性を信じて子育てを続けていくことが大切です。

我が子の成長を喜び、可能性を信じる

物並べに夢中な姿を見て、「うちの子、集中力があるんだな」「几帳面な性格なのかも」と、子どもの長所を発見してみましょう。好奇心旺盛なのは知的好奇心の表れ。パズルやブロックに没頭するのは、空間認知力の高さの証。物並べを通して、我が子の可能性を感じ取ってみてください。そして、その可能性を信じて、子育てを楽しんでいきましょう。

物並べを通じた親子のコミュニケーション

子どもが物を並べている時、一緒に並べてみるのもおすすめです。「○○ちゃんの隣に、パパが並べてみようかな」「一緒に飾り付けしようか」。共同作業を通じて、親子の絆を深められるかもしれません。時には、子どもから「ママ、ここにこれを置いて」と提案されることも。子どもなりのアイデアを尊重し、コミュニケーションを楽しみましょう。

遊びの幅を広げる働きかけ

物並べが得意な子は、こだわりが強い傾向にあります。同じ遊びを繰り返す中で、安心感を得ているのかもしれません。でも、時には「他の遊びも面白いよ」と、新しい刺激を与えることが大切。外遊びに誘ってみたり、友だちを家に呼んだり。物並べ以外の楽しみも、どんどん経験させてあげましょう。興味の幅が広がることで、子どもの世界はさらに広がっていくはずです。

子育ての中で大切にしたいこと

物を並べる行動の意味を理解し、適切に関わっていくことが大切だと分かりました。でも、それ以上に大事なのは、子育て全般に通じる心構えではないでしょうか。子どもの特性を理解し、ありのままを認めること。そして何より、親自身が心の余裕を持つこと。その大切さを、改めて考えてみたいと思います。

子どものありのままを認め、受け止める

物を並べる、並べない。言葉が早い、遅い。社交的、内向的。子どもにはそれぞれの個性があります。大切なのは、我が子のありのままを認め、そのユニークさを愛すること。「うちの子はこういう子」と、子どもの特徴を肯定的に捉えられたら素敵ですね。

発達が気になる部分があっても、必要以上に不安がる必要はありません。我が子を信じ、そっと見守る姿勢を大切にしたいものです。

発達の個人差を理解し、焦らない

子どもの発達には、大きな個人差があります。同じ歳の子と比べて、「うちの子は遅いのでは」と焦ってしまうことも。でも、子どもにはそれぞれのペースがあるのです。ゆっくり育つ子もいれば、あるときグンと伸びる子も。発達のスピードは十人十色だと言えるでしょう。「平均」にとらわれず、我が子の歩幅に合わせて、のんびり子育てを楽しむことが大切なのかもしれません。

親自身の心の安定も大切

子育ての悩みは尽きないもの。「うちの子は大丈夫かな」「もっと何かしてあげられたら…」と、不安や自責の念にさいなまれることも少なくありません。でも、親が疲れ切ってしまっては、子どもに良い影響は与えられません。

だからこそ、親自身が精神的に安定していることが、すべてのベースであるべきです。「完璧な親なんていない」と肩の力を抜き、時には息抜きを。家族や友人、専門家の力を借りながら、自分らしい子育てを楽しんでいきたいですね。

まとめ

幼児期に物を並べて遊ぶのは、ごく自然な発達段階の一つ。秩序を作り出し、集中力を高め、創造性を養う大切な営みだと言えるでしょう。一方、その行動が極端であれば、自閉症の可能性を視野に入れ、専門家に相談することも必要です。でも、診断の有無に関わらず、子どものありのままを認め、特性に寄り添っていくこと。それが子育ての基本であることに変わりはありません。

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