- コラム
エコラリアとは。オウム返しとの違いは?健常児や大人でもする?
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エコラリアとは
エコラリアの定義と特徴
エコラリアとは、他者の発言をオウム返しのように繰り返したり、テレビなどで聞いた台詞を反復したりする行動のことを指します。聞いた言葉をそのまま繰り返すのが特徴で、言葉の意味を理解せずに発することが多いとされています。
エコラリアは、即時性エコラリアと遅延性エコラリアの2つのタイプに分けられます。
即時性エコラリアの具体例
即時性エコラリアは、聞いたことをすぐに繰り返すもので、次のような例が挙げられます。
- 親が「お片付けしようね」と言うと、子どもも「お片付けしようね」とそのまま繰り返す。
- 先生が「鉛筆を出してください」と指示すると、子どもも「鉛筆を出してください」と復唱する。
- 親が「ただいま」と言うと、子どもも「ただいま」と返す。
即時性エコラリアとオウム返しの違いって?
エコラリアは「オウム返し」と混同されることがあります。しかし、両者は(使われる文脈にもよりますが)厳密には異なるものです。
オウム返しは、聞いた言葉をそのまま機械的に繰り返すことを指します。意味の理解を伴わない、単なる音声の模倣と言えるでしょう。一方、エコラリアは、言葉の意味は理解していないことが多いものの、本人としてはコミュニケーションの意図を含んでいる場合があります。
例えば、「ありがとう」と声をかけると「どういたしまして」ではなく「ありがとう」と返す子どもがいたとします。これは、挨拶という社会的な習慣を理解した上での行動かもしれません。
つまり、エコラリアは、単なる音声の反復ではなく、言葉を使ってコミュニケーションしようとする試みの表れと捉えることができるのです。
遅延性エコラリアの具体例
一方、遅延性エコラリアは、以前聞いた言葉を後になって繰り返すもので、会話の文脈とは無関係に特定の言葉やフレーズを発することです。例えば、次のようなケースが遅延性エコラリアに当てはまります。
- 数日前に見たアニメのセリフを唐突に繰り返す。
- 幼稚園で先生が言っていた何気ない言葉を家で何度も口にする。
このように、即時性エコラリアは聞いた直後に起こるのに対し、遅延性エコラリアはある程度の時間が経ってから現れるという違いがあります。
エコラリアは、言語発達の初期段階では定型発達の子どもにも一時的に見られることがありますが、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもたちに多く見られる特徴の一つとして知られています。
自閉症児におけるエコラリアの特徴
自閉症の子どもたちに見られるエコラリアは、定型発達の子どもの一時的なエコラリアとは異なる特徴があります。自閉症の子どもたちのエコラリアは、言語発達の初期だけでなく、年齢を重ねても持続することが多いのです。
自閉症の子どもたちのエコラリアは、即時性エコラリアと遅延性エコラリアの両方が見られますが、特に遅延性エコラリアが顕著だと言われています。過去に聞いたセリフを、文脈に関係なく繰り返すことがよくあるのです。例えば、テレビのコマーシャルのフレーズを何度も口にしたり、以前の会話の一部を突然繰り返したりするなどです。
また、自閉症の子どもたちのエコラリアは、言葉のイントネーションやアクセントまで正確に再現することが多いのも特徴です。
自閉症の子どもたちの約85%にエコラリアが認められると言われており(参考:東北大学『人と人とのコミュニケーションとは』 田中真里)、自閉症の主要な特性の一つと考えられています。エコラリアの頻度や持続期間には個人差が大きいですが、多くの自閉症の子どもたちに何らかのエコラリアが見られるようです。
エコラリアは健常児にもよくある?
エコラリアは自閉症スペクトラム障害の子どもたちの特徴的な言語の使用方法ですが、健常児にも一時的に見られる場合があります。
健常児の場合、言語を習得する過程で、一時的にエコラリアが現れることがあります。特に、1歳半から2歳半頃に顕著に見られると言われています。この時期の子どもたちは、言葉の意味を理解する前に、音声を模倣することで言葉を覚えていきます。
ただし健常児の場合、このようなエコラリアは一時的な現象であり、言葉の意味を理解し、自発的に言葉を使えるようになるにつれて減少していきます。遅くとも3歳頃までには、エコラリアは目立たなくなるのが一般的です。
エコラリアが起こる背景として考えられていること
言語習得の過程で起こるエコラリア
エコラリアが生じるメカニズムについては、まだ完全に解明されているわけではありませんが、いくつかの仮説が提唱されています。その一つが、言語習得の過程で生じるエコラリアです。
定型発達の子どもも、言葉を習得する際に一時的にエコラリアを示すことがありますが、やがて言葉の意味を理解し、自分の言葉で表現できるようになります。しかし、自閉症の子どもたちは、言葉の意味の理解が追いつかないまま、聞いた言葉をそのまま繰り返してしまうのではないかと考えられています。
コミュニケーションの困難さとエコラリア
コミュニケーションの意図はあるものの、適切な言葉が出てこないために、聞いた言葉で代用しているという解釈もあります。伝えたい気持ちはあっても、言葉にできない歯痒さから、エコラリアが生じるのかもしれません。
感覚の偏りとエコラリア
感覚過敏との関連を指摘する意見もあります。自閉症の子どもたちの中には、聴覚をはじめとする感覚の過敏さを持つ子どもが少なくありません。特定の言葉や音声に過剰に反応し、気になって繰り返してしまうのではないかと推測されています。
このように、エコラリアの背景には、言語理解の遅れ、コミュニケーションの困難さ、感覚の偏りなど、自閉症の子どもたちが抱える様々な課題が複合的に関与していると考えられます。
エコラリアへの支援方法
アセスメントの重要性
エコラリアのある子どもへの支援を考える際は、まず詳細なアセスメント(分析)が必要です。言語聴覚士など発達の専門家が、子どもの言語理解力、表出言語、コミュニケーションスキルなどを評価し、エコラリアの特徴や背景となる要因を探ります。子どもの全体的な発達の状況を把握した上で、適切な支援方法を検討するのです。
言語面への直接的アプローチ
言語面への直接的なアプローチとしては、子どもの理解力に合わせた具体的で分かりやすい言葉かけを心がけることが大切です。短い文で、ゆっくりはっきりと話しかけ、必要に応じて絵や写真など視覚的な手がかりを用いるのも有効でしょう。また、エコラリアで言葉を繰り返している時は、言葉の意味を教えたり、適切な表現を示したりすることで、言葉の理解を助けることができます。
コミュニケーション支援
コミュニケーションへのサポートも重要な視点です。言葉だけでなく、身振りや表情など非言語的なコミュニケーションの手段も取り入れながら、伝えたい気持ちを引き出し、言葉にできるよう促していきます。コミュニケーションの楽しさや言葉のやりとりの面白さを体感できるよう、遊びの要素を取り入れた言語指導も効果的だと言われています。
エコラリアは何歳まで続く?大人でもする?
エコラリアは、自閉症スペクトラム障害の子どもたちに見られる言語の特徴ですが、その持続期間は個人差が大きいと言われています。多くの場合、言語発達の初期段階で顕著に現れ、年齢とともに減少していきます。しかし、中には青年期や成人期まで持続する場合もあるのです。
また、ストレスを感じた時や、不安を覚えた時に、一時的にエコラリアが増加することもあります。これは、言葉によるコミュニケーションが困難な状況で、エコラリアが一種の安心材料の役割を果たすためと考えられています。
エコラリアの持続期間は、言語発達の状況や知的な能力、そして環境的な要因など、様々な条件によって左右されると言えるでしょう。個人差が大きいだけに、一人ひとりの特性に合わせた長期的な支援が求められます。年齢に応じた適切な関わりを通して、大人でエコラリアのある方たちであっても、言語やコミュニケーションの発達を促していくことが大切だと考えます。
まとめと展望
エコラリアの理解と適切な支援の重要性
エコラリアは、自閉症スペクトラム障害の子どもたちに高い頻度で見られる特徴の一つです。聞いた言葉をそのまま繰り返す行動の背景には、言語やコミュニケーションの発達の課題、感覚の偏りなど、複合的な要因が関係していると考えられます。
大切なのは、エコラリアを単なる言葉の反復ととらえるのではなく、子どもなりのコミュニケーションの試みの表れと理解することです。言葉の意味が分からないもどかしさ、伝えたい気持ちを言葉にできない歯痒さが、エコラリアとなって現れているのかもしれません。
エコラリアのある子どもへの支援には、言語聴覚士など専門家によるアセスメントを起点に、言語指導、コミュニケーション支援、感覚統合的アプローチなど多角的な関わりが必要とされます。子どもの発達段階や特性に合わせた働きかけを通して、少しずつ言葉の意味を理解し、自分の思いを言葉で表現する力を育んでいくのです。