2024.03.25
  • コラム

【不安解消】通級ってどんな子が通うの?通級指導教室の疑問を徹底解説

通級指導教室とは

通級指導教室の定義と目的

通級指導教室に通うのは、小・中学校、高等学校に在籍する障害のある児童やグレーゾーンの児童です。各教科などの指導を通常の学級で行いながら、障害に応じた指導を行う場です。障害による学習上または生活上の困難の改善・克服を目的とした指導を、個々の児童生徒の障害の状態等に応じた特別の指導計画により、きめ細かに行うことを目的としています。

通常学級との違い

通常学級では、学習指導要領に基づき、各教科等の指導が行われます。一方、通級指導教室では、児童生徒の障害の状態等に応じた特別な指導が行われます。通級指導教室に在籍する児童生徒は、各教科等の大部分の授業を通常の学級で受けながら、週に1単位時間から8単位時間(1単位時間は、小学校では45分、中学校では50分)までの時間を、障害に応じた特別の指導を通級指導教室で受けます。

特別支援学級との違い

特別支援学級は、比較的軽度の障害のある児童生徒に対し、きめ細かな指導を行うために、少人数の学級を編制しているのが特徴です。特別支援学級の児童生徒は、各教科等のほとんどの授業を特別支援学級で受けます。
一方、通級指導教室の児童生徒は、各教科等の大部分の授業を通常の学級で受けながら、一部の時間のみ通級指導教室において特別の指導を受けます。知的障害(知的発達症)のある児童生徒については、特別支援学級では対象となりますが、通級指導教室では原則として対象とはなりません。

通級指導教室の対象となる子供の特性

発達障害の種類と特徴

通級指導教室では、主に発達障害のある児童や、医師からの診断はついていないけど個別の支援が必要と判断される、いわゆるグレーゾーンの子供が学んでいます。発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などの脳機能の障害です。
発達障害のある児童の特性は様々で、代表的な例としては友達とのコミュニケーションが苦手、読み書きや計算に困難がある、不注意で集団生活に支障をきたすなど、学習面や生活面で様々な困難を抱えていることが特徴です。

言語障害・情緒障害等の特性と特徴

通級指導教室の対象となる障害には、発達障害の他にも、言語障害、情緒障害、弱視、難聴などがあります。言語障害は、話し言葉でのコミュニケーションに困難がある状態を指し、吃音や構音障害などが含まれます。情緒障害は、学校生活に適応できない、対人関係がうまく築けないなど、情緒面での困難さを抱えている状態を指します。弱視は視覚障害の一種で、通常の学級での学習に困難があり、特別な配慮を必要とする程度の視力の状態を指します。難聴は聴覚障害の一種で、補聴器等の使用によって通常の学級での学習が可能な程度の状態を指します。

通級指導教室に通う子供の具体例

例えば、以下のような児童生徒が通級指導教室に通っています。

  • 読み書きに困難があり、国語の学習でつまずきが見られる子供
  • 話し言葉でのコミュニケーションは問題ないが、文字から言葉の意味を理解することが難しく、学習の理解が困難な子供
  • 人との関わりが苦手で、学校生活でトラブルを起こしやすい子供
  • 友達とのコミュニケーションが苦手で、グループ活動などで孤立しがちな子供
  • 衝動性が強く、授業中に立ち歩いてしまったり、こだわりが強くて切り替えが難しかったりする子供
  • 集中力が持続しにくく、授業中に気が散りやすい子供
  • 聴覚過敏があり、教室内の雑音に敏感で、落ち着いて授業を受けることが難しい子供
  • 自分の考えを言葉で表現することが苦手な子供
  • 感情のコントロールが難しく、些細なことでかんしゃくを起こしてしまう子供

ただし、これらはあくまで一例です。
例に挙げたような傾向のあるなしに関わらず、子供自身が持つ特性や困難さと向き合い、どんな環境で学ぶことが適切なのかを考えることが大切です。

通級指導教室での指導内容と方法

個別指導と小集団指導

通級指導教室では、児童の実態に応じて、個別指導と小集団指導を組み合わせて行われます。例えば、読み書きに著しい困難さを示す児童に対しては、マンツーマンによる個別指導を中心に行い、徐々に小集団指導に移行していくといった形が考えられます。小集団指導では、ソーシャルスキルトレーニングなどを行い、対人関係やコミュニケーションに関するスキルの向上を目指します。

自立活動の指導

自立活動の指導とは、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養い、もって自立を図るために行われる指導のことです。具体的には、障害の状態等に応じて、言語の受容や表出、対人関係、認知や行動の手立て等について指導を行います。通級指導教室においては、自立活動の時間を特設し、個々の児童生徒の障害の状態等に即して指導を行います。

教科指導における配慮

通級指導教室では、各教科等の指導についても、障害の状態等に配慮した指導を行います。例えば、国語では読み書きに困難のある児童生徒に対し、マルチメディアデイジー教科書等の活用を図ります。算数・数学では、計算の仕方を丁寧に指導したり、具体物を操作したりするなど、理解を助ける手立てを工夫します。また、教科担任と通級指導教室の担当教員が連携を密にし、指導方針や配慮点を共有することが大切です。

個別の教育支援計画と個別の指導計画

通級指導教室での指導は、個別の教育支援計画と個別の指導計画に基づいて行われます。個別の教育支援計画は、長期的な視点で幼児期から学校卒業後までを見通して、一貫した支援を行うために作成されるものです。児童生徒等一人一人のニーズを正確に把握し、教育の視点から適切に対応していくという考えの下、福祉、医療、労働等の関係機関との連携を図りつつ作成します。個別の指導計画は、児童生徒等一人一人の教育的ニーズに対応して、指導目標や指導内容・方法などを盛り込んだ計画です。実態把握に基づき、具体的で実現可能な目標を設定し、PDCAサイクルを意識した指導を展開していきます。

通級指導教室のメリットと課題

メリット:個別のニーズに応じた指導

通級指導教室の最大のメリットは、個々の児童生徒の障害の状態やニーズに応じたきめ細かな指導が受けられる点です。少人数での指導や、個別のカリキュラムに基づく指導により、児童生徒の特性に配慮したテンポや内容で学習を進めることができます。また、自立活動の指導など、障害に特化した専門性の高い指導を受けられることも大きな利点と言えます。

メリット:通常の学級との交流を通した社会性の育成

通級指導教室に通う児童生徒は、各教科等の大部分の授業を通常の学級で受けることから、様々な子供と関わる機会が多く設定されています。多様な価値観に触れたり、コミュニケーションを通して人間関係を築いたりすることで、社会性の発達が促されます。集団生活への適応力を高め、将来の社会参加につなげていくことができるのです。

課題:指導時間の制約

通級指導教室は、週に1単位時間から8単位時間までの指導を行う場です。限られた時間の中で効果的な指導を行うには、指導内容の精選と、指導方法の工夫が求められます。また、児童生徒の障害の状態等によっては、より多くの指導時間の確保が望ましい場合もあります。必要に応じて指導時間を弾力的に設定できるような制度上の対応が期待されます。

課題:専門性のある教員の確保

通級指導教室の担当教員には、特別支援教育に関する専門性が求められます。しかし、特別支援学校教諭免許状を保有する教員の人数は十分とは言えず、専門性のある教員の確保が課題となっています。教員の専門性向上のため、免許法認定講習の受講促進や、校内外の研修機会の充実が望まれます。また、専門家チームとの連携を強化し、指導の質を高めていくことも重要です。

通級指導教室への入級手続きと支援の流れ

通級指導教室への入級手続き

通級による指導を受けるためには、まず保護者からの申し出が必要です。その後、校内委員会等で児童生徒の実態を把握し、通級による指導の必要性について検討します。通級による指導が適当と判断された場合、教育委員会が判断し、入級が決定します。なお、通級による指導の開始にあたっては、本人・保護者の意向を十分に尊重することが求められます。

個別の教育支援計画・個別の指導計画の作成

入級が決まったら、まず実態把握を行います。児童生徒の障害の状態、発達や経験の程度、生活の状況などについて、観察や面接、諸検査等を通して、詳細な情報収集を行います。それらの情報を整理し、個別の教育支援計画と個別の指導計画を作成します。本人・保護者の意向を踏まえるとともに、福祉や医療等の業務を行う関係機関と連携を図りながら、支援の方向性や具体的な指導目標・内容・方法等を検討していきます。

通級指導教室における指導の展開

指導計画に基づき、通級指導教室において、個に応じた指導を展開します。指導に当たっては、児童生徒の障害の特性や心身の発達の段階、学習上又は生活上の困難等を十分に把握した上で、適切な指導内容・方法を工夫します。また、児童生徒の変容の様子を丁寧に見取り、指導目標や指導内容・方法の妥当性を検証しながら、PDCAサイクルを確実に展開していくことが大切です。

関係者との連携による支援の充実

通級指導教室での指導の充実のためには、関係者との連携が欠かせません。在籍学級の担任とは、日頃から情報交換を密にし、児童生徒の状況について共通理解を図ります。また、保護者とは信頼関係を構築し、家庭での様子等について情報を得るとともに、指導方針について合意形成を図ります。さらに、必要に応じて、医療、福祉、労働等の関係機関とも連携し、専門的な立場からの助言を得ながら、支援の質の向上を目指します。

通級指導教室の現状と課題

通級指導教室数と児童生徒数の増加

(参照:【文科省】R5特別支援教育の充実について)

近年、通級指導教室及び通級による指導を受ける児童生徒数は増加の一途をたどっています。文部科学省の調査によると、令和2年度には、全国で12,976校に通級指導教室が設置され、164,697人の児童生徒が通級による指導を受けています。平成24年度と比較すると、通級指導教室数で約1.5倍、児童生徒数で約2.3倍に増加しています。
今後、インクルーシブ教育システムの構築が進む中、通級による指導のニーズはさらに高まることが予想されます。

制度の弾力的な運用の必要性

通級による指導は、児童生徒の障害の状態等に応じて、弾力的に運用されることが期待されます。例えば、指導時間については、年間35単位時間から280単位時間までの範囲で、各教育委員会が適切に定めることとされています。
しかし、実際には、指導時間の確保が困難なケースも少なくありません。児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた、柔軟で弾力的な指導時間の設定が望まれます。また、対象とする障害種についても、従来の言語障害、自閉症、情緒障害、弱視、難聴、学習障害、注意欠陥多動性障害等から、肢体不自由や病弱・身体虚弱等へと、徐々にその範囲が広がりつつあります。
児童生徒の実態を十分に見極め、必要な支援が提供できるよう、制度の弾力的な運用が求められます。

教員の専門性向上と人的配置の拡充

通級指導教室の担当教員には、特別支援教育に関する高い専門性が求められます。しかし、特別支援学校教諭免許状を保有する教員の割合は十分とは言えず、専門性の向上が喫緊の課題となっています。
教員の専門性向上のため、免許法認定講習の受講促進や、特別支援教育に関する研修の充実が必要です。また、教員の人的配置の拡充も重要な課題です。通級指導教室の設置数の増加に伴い、担当教員の確保が困難になりつつあります。特別支援教育の専門性のある教員の計画的な養成・採用と、適切な配置が望まれます。

関係機関との連携強化

通級による指導の充実のためには、教育、福祉、医療、労働等の関係機関との連携強化が不可欠です。特に、発達障害のある児童生徒への支援においては、医療機関との連携が重要となります。
しかし、現状では、関係機関との連携が十分に図られているとは言い難い状況にあります。各学校において、関係機関との連携体制を構築し、専門的な助言や支援を得ながら、児童生徒への指導・支援の充実を図ることが求められます。
また、行政レベルでも、福祉や労働等の関係部局との連携を強化し、切れ目のない支援体制の整備を進めていくことが重要です。

子供に合った就学先の選択に向けて

子供の特性と教育的ニーズの把握

子供に合った就学先を選択するためには、子供の障害の特性や教育的ニーズを的確に把握することが必要です。障害の状態や発達の状況、学習上又は生活上の困難さ等について、保護者や関係機関等から情報を収集し、多角的な視点から見立てを行います。その際、子供の得意なことや興味・関心、長所等の情報も合わせて把握し、子供の可能性を最大限に引き出すための指導・支援の在り方を探ります。

通常の学級との連続性を踏まえた柔軟な対応

通級指導教室は、通常の学級との連続性を保ちつつ、特別な指導を行う場です。子供の発達や障害の状態等によっては、通常の学級での指導と通級指導教室での指導を組み合わせることで、教育的ニーズに適切に対応することができます。就学先の選択に当たっては、通常の学級と通級指導教室、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場の中から、子供の実態に合った指導の形態を柔軟に選択していくことが大切です。

将来の自立と社会参加を見据えた指導

就学先の選択は、子供の現時点での教育的ニーズに基づくだけでなく、将来の自立と社会参加を見据えた視点から検討することが重要です。社会性やコミュニケーション力、学習面での困難さ等に着目し、必要な指導・支援を行うことで、子供の健やかな成長と、将来の自立につなげていくことが期待されます。保護者や関係機関等と連携し、長期的な視点から子供の可能性を最大限に伸ばすための就学先選択を行っていくことが必要です。

通級指導教室は、発達障害等のある児童生徒の自立と社会参加を促すための大切な学びの場です。特別支援教育の視点を取り入れながら、一人一人のニーズに寄り添った指導の充実が期待されています。

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