- 子育てコラム
不登校の定義とは?文科省の統計データや推移を読み解く
不登校とは
不登校の定義
文部科学省による定義
文部科学省は、不登校を以下のように定義しています。「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く)」。この定義は、平成4年の学校不適応対策調査研究協力者会議で示されたものであり、現在の学校基本調査でも使用されています。
定義の変遷
不登校の定義は、時代とともに変化してきました。昭和41年度から平成2年度までは、「学校ぎらい」で年間50日以上欠席した児童生徒が調査対象でしたが、平成3年度から平成9年度までは、「学校ぎらい」で年間30日以上欠席した児童生徒も調査対象に加わりました。平成10年度からは、「学校ぎらい」という用語が「不登校」に変更され、年間30日以上欠席した児童生徒を指します。ただし、病気や経済的理由による長期欠席は除外されます。
不登校の原因と背景
心理的要因
不登校の背景には、様々な心理的要因が関わっています。例えば、学校での人間関係のストレス、勉強についていけない不安、いじめや友人関係のトラブルなどです。思春期特有の自己肯定感の低下や、自分の居場所が見つからないことも、不登校の引き金になることがあります。
情緒的要因
不登校の子どもたちは、情緒面でも不安定な状態にあることが少なくありません。急激な環境の変化についていけなかったり、家庭内の問題にストレスを感じたりと、様々な要因が重なって心理的に不安定になります。パニック障害や緘黙など、情緒的な問題を抱えているケースもあります。
身体的要因
心因性の身体症状が現れることもあります。頭痛や腹痛、吐き気など、学校に行こうとすると体調不良を訴えるなどです。心の不安定さが身体に表れている状態であ、安心して過ごせる環境を整えることが大切です。
不登校の現状と統計
不登校児童生徒数の推移
文部科学省の調査(令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果)によると、令和4年度の小中学校における不登校児童生徒数は過去最多の299,048人に上り、前年度から54,108人(22.1%)増加しました。在籍児童生徒1,000人あたりの不登校児童生徒数は32人(小学校17人、中学校60人)であり、中学生では17人に1人が不登校という状況です。
小学生の不登校児童数は105,112人で前年度より29.0%増加、中学生の不登校生徒数は193,936人で前年度より18.7%増加しており、いずれも過去最多を更新しています。不登校児童生徒数は平成3年度以降一貫して増加傾向にあり、平成3年度と比べると小学生で約8.3倍、中学生で約3.6倍にまで増加しています。
年間90日以上欠席した不登校児童生徒の割合
不登校児童生徒のうち、年間90日以上欠席した児童生徒の割合は55.4%(小学校44.6%、中学校61.2%)にのぼります。特に中学校では6割以上の不登校生徒が年間90日以上学校を欠席しており、不登校の長期化・深刻化が進んでいることがわかります。
学年別の不登校児童生徒数
学年別に見ると、小学校では学年が上がるにつれて不登校児童数が増加し、6年生では3万人を超えています。中学校に入学すると急増し、中1の時点で5万人以上の生徒が不登校になっていることがわかります。中1から中2にかけても不登校生徒数は大幅に増加し、中2と中3では7万人前後で推移しています。
不登校の子どもへの接し方
子どもの気持ちを受け止める
不登校の子どもと接する時は、「どうして学校に行かないの?」と詰め寄るのではなく、まずは本人の気持ちを受け止めることが大切です。学校に行かない辛さ、友達関係の悩み、勉強への不安など、子どもの心に寄り添い、共感的に理解しようと努めましょう。「あなたの気持ちはよくわかるよ」「つらかったね」と、言葉に出して伝えることで、子どもは安心して心を開いてくれるはずです。子どもの訴えに耳を傾け、気持ちに寄り添うことが、不登校支援の第一歩なのです。
安心できる居場所をつくる
学校に居場所を見出せない子どもたちには、家庭に安心できる居場所があることが何より大切です。子ども専用の部屋を用意したり、リラックスできるスペースを設けたりして、「ここにいていいんだ」と実感できる環境を整えましょう。そこで子どもが好きなことに没頭したり、のんびり過ごしたりできれば、心の安定につながります。学校以外の羅針盤を失っている子どもたちにとって、家族の見守る居場所は、心の拠り所になるはずです。
焦らずゆっくり見守る
不登校の子どもを前にして、保護者はついイライラしたり、早く登校させようと焦ったりしてしまうことがあります。しかし、子どもの心のペースを尊重し、ゆっくり見守ることが何より大切なのです。「早く学校に行かなきゃ」というプレッシャーは、子どもの心に重荷になるだけ。今は学校に通えなくても、ゆっくり休養を取りながら、自分のペースで社会とのつながりを取り戻していけばいいのだと、子どもに伝えましょう。子どもの回復のプロセスを、焦らず根気強く見届けていくことが大切なのです。
不登校への対応と支援
学校の役割と取り組み
校内での居場所づくり
不登校の子どもが少しでも学校と関わりを持ち続けられるよう、校内での温かい居場所づくりが求められます。保健室や相談室など、教室以外の場所で過ごせる環境を整えたり、図書館司書やスクールカウンセラー等の専門スタッフが常駐していたりすると、子どもも安心感を持てるでしょう。授業に出席しなくても学校に登校し、安心できる場所で過ごせることは、不登校の改善に向けての第一歩となります。学校全体で居場所づくりに取り組む体制が必要です。
教師との信頼関係の構築
担任の先生をはじめとした教師との信頼関係は、不登校の子どもにとって何より心強い支えになります。子どもの小さな変化も見逃さず、褒めて認めてあげる。悩みを打ち明けられたら、一緒に解決策を考える。授業や学習面でも、子どものペースに合わせて柔軟に対応する。そうした教師の姿勢に触れることで、子どもは「自分を理解し、支えてくれる人がいる」と実感できるのです。担任だけでなく、様々な教師が連携しながら、チーム体制で子どもを支えていくことが理想的でしょう。
学習支援の工夫
不登校の子どもの中には、授業についていけなくなって、学習に大きな不安を抱えている子もいます。そうした子どもたちのために、学校は学習支援の工夫を凝らす必要があるでしょう。欠席した授業の補習を行ったり、個別指導の時間を設けたりするなど、子どものニーズに合わせた支援が求められます。ICTを活用したオンライン学習の中には、出席扱いとなるものもあります。学習面でのつまずきを取り除くことが、不登校の改善にもつながることもあります。
専門機関との連携方法
スクールカウンセラーの活用
学校に配置されているスクールカウンセラーは、不登校の子どもや保護者への心理的サポートにも力を発揮してくれます。子どもの心理状態を見立てたり、具体的な対応方法をアドバイスしたりと、専門的な視点から支援してもらえるのです。定期的にカウンセリングを受けることで、子どもも自分の気持ちを整理しながら、少しずつ前向きな一歩を踏み出せるようになるでしょう。学校とも連携しながら、子どもや家族を支える心強い味方となってくれます。
医療機関との連携
不登校の背景に、精神的な疾患や発達障害などの問題が隠れている場合もあります。子どもの状態に応じて、医療機関への受診も視野に入れる必要があるでしょう。専門医に相談し、的確な診断とアドバイスをもらうことが、子どもの心身の安定につながることも。学校と医療機関、家庭が連携を取りながら、多角的に子どもを支えていく体制づくりが求められます。
フリースクール等の学校外の居場所づくり
学校に通うことが難しい子どもたちの居場所として、フリースクールや不登校専門の支援施設など、学校外の機関を利用することも考えられます。学校とは違う環境の中で、同じ悩みを抱える仲間と出会い、自分らしさを発見していく。そんな体験の積み重ねが、不登校の子どもを少しずつ自立へと導いてくれかもしれません。
不登校を乗り越えるために大切なこと
子ども自身の主体性を尊重する
不登校を乗り越える過程で何より大切なのは、子ども自身の主体性を尊重することです。学校に行くかどうか、どんな支援を受けるかは、本人の意思を最大限尊重しながら決めていくこと。「早く学校に行きなさい」と急かすのではなく、子どものペースに合わせて見守ることが大切です。
時には子どもの選択が周囲の期待とずれることもありますが、それもまた成長のプロセス。子どもが自分で考え、判断し、行動する経験の積み重ねが、やがて主体的に社会に踏み出す力につながるのです。
一人ひとりの個性に合わせた支援を
不登校の子どもたちは、十人十色の個性を持っています。おとなしく引っ込み思案な子もいれば、興味のあることには積極的に取り組む子もいる。勉強が苦手な子や、特定の教科が得意な子。家族環境や生育歴も、それぞれに異なります。だからこそ支援の方法も、一人ひとりに合わせてオーダーメイドで考えていくことが大切なのです。子どもの性格や特性、家庭の状況などを踏まえながら、その子に合ったアプローチを見つけること。時間もかかれば、試行錯誤も必要でしょう。子どもの個性に寄り添いながら支え続けることが大切です。
まとめ
不登校は、特別な子どもだけが陥る問題ではありません。時間はかかっても、子どもを信じ、支え続けることが何より大切なのです。子ども自身も、周囲の大人も、焦らず、あきらめずに、乗り越えていきたいですね。