2025.09.03
  • 子育てコラム

チクチク言葉からふわふわ言葉に言い換え!子供の言葉遣いを導く方法

親や支援者がひやっとする、子供のきつーい言葉

「バカ」「うるさい」「きらい」など、我が子から出てくるきつめの言葉遣いが心配になってしまうママパパは少なくありません。特に発達障害やグレーゾーンのお子さんを育てている場合、「相手の気持ちを考えられない」「何度注意しても直らない」と、発達特性と絡めてモヤっとしてしまいがちです。

発達特性の有無に限らず、まだ幼いお子さんの場合は、感情をうまく表現する方法がわからなかったり、相手の立場に立って考えることが苦手だったりするため、つい相手を傷つけるような言葉を使ってしまうことがあります。そこで近年使われるのが「チクチク言葉」「ふわふわ言葉」という説明方法。

この記事では、発達特性を持つお子さんの言葉遣いを改善する「チクチク言葉」から「ふわふわ言葉」への転換方法を、具体的な言い換え表とともに詳しく解説します。

チクチク言葉とふわふわ言葉とは?発達特性を持つ子にこそ効果的な理由

チクチク言葉・ふわふわ言葉の定義

「チクチク言葉」とは、相手の心をチクチクと刺すような、嫌な気持ちにさせる言葉のこと。一方、「ふわふわ言葉」は、相手の心をふわふわと温かく包むような、嬉しい気持ちにさせる言葉なんです。

この考え方は、今や多くの小学校や発達支援の場で道徳の時間に取り入れられています。子どもたちが良好な人間関係を築くための、とても大切な基礎になっているんですよ。

発達障害・グレーゾーンの子に特にも”使える”理由

発達特性のあるお子さんにとって、この「チクチク言葉・ふわふわ言葉」という概念がなぜ特に効果的なのでしょうか?

ルールが明確で分かりやすい

抽象的な「優しく話しなさい」ではなく、「ふわふわ言葉を使おうね」と具体的に分類されているので、どの言葉がOKでどの言葉がNGなのかが一目瞭然。発達っ子には、こういう明確な基準があるととても理解しやすいんです。

感覚的なイメージで記憶に残りやすい

「チクチク」「ふわふわ」という体で感じられる表現なので、言葉の効果を実感しやすいのもポイント。針で刺されるようなチクチクと、雲に包まれるようなふわふわ、どちらが気持ちいいかは子どもでも分かりますよね。

具体的な言い換え方法が学べる

「もっと優しく」と言われても、何をどうすればいいのか分からないもの。でも「バカって言う代わりに、がんばったねって言ってみよう」という具体的な方法があれば、すぐに実践できます。

発達っ子がつい「チクチク言葉」を使ってしまう理由

発達特性による要因として考えられること

発達特性のあるお子さんがチクチク言葉を使ってしまう背景には、いくつかの要因があります。

相手の気持ちを推測するのが難しい場合も

相手の表情や声のトーンから気持ちを読み取ることが苦手な場合があり、自分の言葉が相手にどのような影響を与えるかを予想するのが困難なことがあります。

感情のコントロールがまだまだ未熟

感情が高ぶったときに、適切な言葉を選ぶ余裕がなくなり、思ったことをそのまま口に出してしまうことがあります。

コミュニケーションスキルも発展途上

自分の気持ちを適切に表現する方法や、相手に配慮した伝え方をまだ学習途中の段階にあります。

年齢的に仕方ない部分もあるかも…

発達特性に関わらず、未就学児から小学校低学年の子どもには共通する要因もあります。

語彙力がついていない

自分の感情を表現するための言葉のストックが少ないため、強い表現に頼ってしまうことがあります。

抽象的な概念の難しさ

「思いやり」「配慮」といった抽象的な概念を理解し、実践するのは発達途中の段階です。

子供特有の真似っこの影響

周囲の大人や友達が使っている言葉を真似して使うことが多く、その言葉の持つ意味や影響を十分理解せずに使用することがあります。

【保存版】場面別・シチュエーション別 チクチク言葉↔ふわふわ言葉 変換表

基本の言い換え一覧

まずは、日常的によく使われるチクチク言葉とその言い換え例を紹介します。印刷して冷蔵庫に貼ったり、お子さんと一緒に確認したりするのにお使いください。

チクチク言葉ふわふわ言葉への言い換え使う場面の例
バカ「がんばったね」「つぎはできるよ」相手が失敗したとき
うるさい「しずかにして」「ちいさいこえでお話ししよう」騒がしいとき
きらい「ちょっとにがて」「べつのがいいな」嫌なことを断るとき
だめ「こうしたらどう?」「いっしょにかんがえよう」提案を断るとき
できない「むずかしいね」「てつだって」困っているとき
やめろ「やめて」「こまるよ」やめてほしいとき
あっちいけ「ひとりになりたい」「あとでお話ししよう」一人になりたいとき
おまえ「○○ちゃん」「○○くん」人を呼ぶとき
なにそれ「それなあに?」「おしえて」わからないものがあるとき
つまんない「ちがうあそびがしたい」「ほかになにかある?」楽しくないとき
へた「れんしゅうすればじょうずになるよ」「がんばってるね」相手の技能について
くさい「におい気になる」「ちょっとくさいかも」臭いが気になるとき
いらない「いまはいらない」「ありがとう、だいじょうぶ」物を断るとき
わからない「おしえて」「いっしょにかんがえよう」理解できないとき
めんどくさい「むずかしそう」「ゆっくりやろう」面倒に感じるとき
ずるい「どうしてそうなったの?」「なんで?」不公平に感じるとき
かえれ「またこんどあそぼう」「バイバイ」お別れするとき
アホ「おもしろいね」「ユニークだね」からかいたいとき
むかつく「いやなきもち」「モヤモヤする」イライラするとき
じゃま「いまつかってるから待って」「あとでね」邪魔されたとき
おそい「じかんかかるね」「ゆっくりでだいじょうぶ」遅いと感じるとき
やばい「たいへんだね」「どうしよう?」困った状況で

家庭内でのやりとり

場面チクチク言葉ふわふわ言葉
お手伝いを頼まれたとき「やりたくない」「こんどでもいい?」「どうやるかおしえて」
料理が苦手なとき「まずい」「ちょっとにがて」「こんどはちがうものがいいな」
きょうだい喧嘩のとき「あっちいけ」「ひとりのじかんがほしい」「あとであそぼう」
宿題が分からないとき「できない」「むずかしくてこまってる」「てつだって」
早く寝るよう言われたとき「やだ」「もうすこしだけいい?」「これがおわったらねる」
片付けを注意されたとき「うるさい」「わかった」「いまやります」
テレビを消すよう言われたとき「いやだ」「これがおわったらけします」
お風呂に入るよう言われたとき「めんどくさい」「もうすこしまって」「じゅんびします」
野菜を食べるよう言われたとき「きらい」「ちょっとにがて」「すこしだけたべてみる」
忘れ物を注意されたとき「わすれた」「きをつけます」「こんどはおぼえておく」

きょうだい喧嘩の場面

場面チクチク言葉ふわふわ言葉
おもちゃを取られたとき「かえせよ」「かして」「じゅんばんこしよう」
邪魔されたとき「じゃま」「いまつかってるからまって」「あとでね」
約束を破られたとき「うそつき」「やくそくとちがうよ」「どうしたの?」
先にやられたとき「ずるい」「わたしもおなじようにしたい」「じゅんばんね」
からかわれたとき「やめろ」「やめて」「それはいやです」
比較されたとき「むかつく」「そういわれるとかなしい」「いやなきもち」
物を壊されたとき「弁償しろ」「たいせつなものだったの」「こまった」
仲間外れにされたとき「いじわる」「いっしょにあそびたい」「いれて」
能力を比べられたとき「まけてない」「わたしもがんばる」「おしえて」
注意されたとき「かんけいない」「わかった」「きをつける」

友達との関係

場面チクチク言葉ふわふわ言葉
遊びに誘われたとき(断る)「いやだ」「きょうはべつのことがしたいな」「またこんどお願いします」
ルールが分からないとき「わからない」「おしえてもらえる?」「どうやるの?」
負けたとき「つまんない」「くやしいな」「もういっかいしよう」
上手くできないとき「できない」「むずかしいね」「コツをおしえて」
意見が違うとき「ちがう」「わたしはこうおもうよ」「どっちがいいかな」
待たされるとき「はやくしろ」「じゅんびできた?」「まってるよ」
約束を忘れられたとき「わすれたの?」「やくそくのことだけど」「おぼえてる?」
からかわれたとき「やめろよ」「それはやめて」「いやなきもちになる」
物を借りるとき「かして」「かしてもらえる?」「おねがいします」
謝られたとき「あたりまえ」「だいじょうぶだよ」「こんどはきをつけてね」

学習場面

場面チクチク言葉ふわふわ言葉
問題が分からないとき「わからない」「おしえてください」「どうやってとくの?」
間違えたとき「だめだった」「まちがえちゃった」「もういちどやってみる」
難しい問題のとき「むり」「むずかしいね」「ヒントください」
友達が間違えたとき「ちがうよ」「こうかもしれないよ」「いっしょにかんがえよう」
競争で負けたとき「ずるい」「すごいね」「つぎはがんばる」
手伝いを求められたとき「いやだ」「どうやってつだう?」「わからないけどやってみる」
授業についていけないとき「おいてかれた」「もういちどせつめいしてください」「ゆっくりおねがいします」
発表するとき「できない」「きんちょうします」「がんばってみます」
宿題を忘れたとき「わすれた」「すみません、わすれました」「こんどはきをつけます」
テストの結果が悪かったとき「さいあく」「もっとべんきょうする」「つぎはがんばる」

発達特性のある子への効果的なアプローチって?

発達特性のあるお子さんにチクチク言葉からふわふわ言葉への転換を教える際は、以下のポイントを意識しましょう。

視覚的に分かりやすく伝える

言い換え表を目に見える場所に貼ったり、イラストカードを使ったりして、視覚的に理解を促進します。「チクチク」は針のような痛いイメージ、「ふわふわ」は雲のような優しいイメージで説明すると分かりやすくなります。

繰り返し学習に配慮した教え方を取り入れてみる

幼い子供の場合は、一度教えただけでは定着しにくい場合もあるため、日常の中で繰り返し練習する機会を設けたいですね。同じパターンを何度も確認し、少しずつ身につけていけるようサポートしましょう。

具体例を多く示すとわかる場合も

抽象的な説明よりも、具体的な場面での言い換え例をたくさん示すことが重要です。お子さんがよく遭遇する状況を想定して、その都度適切な言い換えを一緒に考えてみましょう。

少しでもできたらいっぱい褒めるのも大切

子育ての中で色々な場面で聞く「いっぱい褒めてあげてください」という言葉ですが、できたかできていないかに限らず少しでもいいところを見つけて積極的に褒めてあげたいですね。「さっき『てつだって』って優しく言えたね。お母さんもお手伝いしたくなったよ」のように、どの言葉が良かったのかを具体的に伝えましょう。

未就学児なら大げさなくらい喜んで見せる、小学生なら「成長したね」と認める言葉をかけるなど、年齢や性格に応じて褒め方を工夫したいですね。

すぐに結果が出なくても焦らないことが大切です。言葉遣いの改善には時間がかかります。3か月、半年という長いスパンで変化を見守りましょう。お子さんが攻撃的な言葉を使い続けると親もストレスを感じますが、「今は練習中」と冷静になることも大切です。家庭での取り組みだけでは限界を感じたら、療育や園・学校の先生と連携することも検討してもいいでしょう。

チクチク言葉からふわふわ言葉への言い換えを、子どもの世界を広げる第一歩に

チクチク言葉からふわふわ言葉への転換は、単なる言葉遣いの改善ではなく、発達特性のあるお子さんにとって、新しいコミュニケーションの方法を学んだり、お友達の気持ちを理解するための大切な学習です。

時間はかかりますが、必ず お子さんの人生にプラスの変化をもたらします。毎日少しずつ、焦らずに取り組んでいけば、きっとお子さんの言葉は変わっていきます。お子さんの成長を信じて、焦らずに温かく見守りながら一緒に歩んでいきましょう。

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