2024.03.21
  • コラム

発達障害、グレーゾーンの子どもの強すぎる正義感への向き合い方

発達障害のあるお子さんの中には、極端に正義感が強く、周囲の子供たちとの関係づくりに悩んでいるという相談をよく耳にします。「ルールを守らない子を見るとすぐに注意してしまう」「嘘をつくことを極端に嫌がる」など、正義感の強さゆえに、友達から浮いてしまったり、トラブルに巻き込まれたりすることがあるようです。

でも、考えてみてください。正義感が強いこと自体は、決して悪いことではありません。むしろ、真面目で誠実な子供の表れと言えるかもしれません。大切なのは、その正義感をどう表現し、周囲とどう折り合いをつけていくかということです。ここでは、発達障害児の正義感の特徴を理解したうえで、親御さんや周囲の大人ができるサポートについて考えていきたいと思います。

 

発達障害児の正義感の特徴

まず、発達障害児の正義感にはどのような特徴があるのでしょうか。よく見られるのが、以下のような傾向です。

ルールへのこだわりの強さ

発達障害児は、ルールを守ることに強いこだわりを持つ傾向があります。学校や家庭、社会におけるきまりごとを、字義通りに捉えて忠実に守ろうとするのです。そのため、ルールから少しでも外れる行動を見ると、我慢できずに注意したり、指摘したりしてしまいます。

嘘をつくことへの拒否感

また、嘘をつくことへの拒否感も非常に強いと言われています。「うそはいけないこと」という価値観が強く、友達が冗談半分で嘘をついただけでも、真に受けて怒ってしまうことがあります。

曖昧さを許容しにくい

そして、物事の線引きがはっきりしていないと混乱しやすいのも特徴の一つです。「場合によっては多少のルール違反も大目に見る」といった柔軟な対応が苦手で、どんなときでも「ルールはルール」といった具合に、白黒つけたがる傾向が見られます。

こうした特徴から、発達障害児は周囲の子供たちとの関係でつまずきを感じることが多いようです。「もっと柔軟に考えればいいのに」「時と場合によって使い分けられたら」と、歯がゆく感じる親御さんもいらっしゃるかもしれません。

正義感の強さの背景にあるもの

では、なぜ発達障害児は、これほどまでに正義感が強くなってしまうのでしょうか。背景には、発達特性に由来する認知面での偏りなどがあると考えられています。

認知の偏りによる「白か黒か」の思考

発達障害児は、物事を多面的に捉えることが苦手な傾向があります。ものごとを「白か黒か」「正しいか正しくないか」といった二者択一的に考えてしまうのです。そのため、状況に合わせて臨機応変に判断することが難しく、融通の利かない言動になりやすいと言われています。

共感性の困難さ

また、他者の気持ちを想像したり、共感したりすることの苦手さも、背景要因の一つかもしれません。相手の意図や状況を十分に理解できないために、表面的な言動だけを見て、一方的に「正しい・正しくない」と決めつけてしまう。そんな傾向が、強すぎる正義感につながっているのかもしれません。

こうした発達特性を理解したうえで、子供の正義感の強さと向き合っていくことが大切です。単に「抑える」のではなく、よりよい形で表現し、周囲の理解を得られるようサポートしていくことが求められるでしょう。

周囲の友達との関係づくりのポイント

では、発達障害児が周囲の友達とうまく関係を築いていくには、どのような工夫が必要でしょうか。ポイントは以下の4点です。

正義感の表現方法を工夫する

「これはよくない行為だ」と感じたとき、大切なのはその気持ちをどう伝えるかです。感情的に注意したり、大げさに騒いだりするのではなく、冷静に事実を伝えることを心がけましょう。「〇〇さんがこうしたから、ぼくはこう思う」といった具合に、自分の意見を「I(私)メッセージ」で伝える練習をするのもおすすめです。

柔軟性を身につける練習

「状況によって物事の判断は変わる」ということを、少しずつ学んでいくことも大切です。日常生活の中で「これは例外だね」「今日は特別だから」といったシーンを意識的に経験させ、白黒つけずに考える練習を積み重ねましょう。

友達の気持ちを理解する機会を作る

「なぜそういう行動をとったのか」友達の気持ちを想像してみる習慣も身につけたいですね。親子で実際にあったエピソードを取り上げ、登場人物の気持ちを考えてみるのも良い方法です。相手の立場に立って物事を見る力を養うことで、柔軟な対応ができるようになっていくでしょう。

得意分野を活かした友達づくり

発達障害児の中には、特定の分野に秀でた能力を発揮する子も少なくありません。そうした得意分野を活かして、周囲の子供たちと一緒に活動する機会を作るのも効果的です。力を発揮できる場面では、自然とリーダーシップを取れるはず。友達から頼りにされる経験は、自己肯定感を高めることにもつながります。

このように、発達障害児が正義感の強さと折り合いをつけながら、友達との良い関係を築いていくための方法はたくさんあります。子供の特性をよく理解し、長い目で見守っていくことが何より大切だと言えるでしょう。

教師や周囲の大人にできるサポート

最後に、教師をはじめとする周囲の大人が、発達障害児の正義感の強さにどう向き合っていけばよいか、ポイントを整理しておきましょう。

子供の正義感を肯定的に受け止める

「間違ったことはきちんと指摘する」という姿勢は、決して悪いことではありません。むしろ「正直でいい子だね」と、その真っ直ぐさを認め、褒めてあげることが大切です。そのうえで、伝え方のコツなどを具体的にアドバイスしてあげると良いでしょう。

クラスのルールづくりに参加してもらう

発達障害児の正義感の強さを、クラスづくりに活かすのも一案です。ルールを作る話し合いの場に参加してもらい、みんなが納得できるきまりごとを一緒に考えてもらう。そうした機会を通して、「ルールとは皆で作り、皆で守るもの」という意識を育んでいけるはずです。

友達関係の仲介役になる

時にはトラブルの調停役となることも、大人の重要な役割です。発達障害児の言動の意図を周囲の子供たちに代弁したり、逆に、周囲の子の気持ちを発達障害児に伝えたりと、橋渡し役を買って出る。双方の歩み寄りを促し、関係修復のサポートをしてあげてください。

このように、教師をはじめとする周囲の大人が、発達障害児の正義感の強さを受け止めながら、友達関係の調整役となることが求められます。教師と親御さんが連携し、学校と家庭で一貫した方針を持って子供に関わっていくことが何より大切になるでしょう。

まとめ:正義感の強さを子供の良さに変えていくために

発達障害児の強すぎる正義感は、時に周囲との軋轢を生む原因になります。しかし、それは子供なりに「正しさ」を追求する真っ直ぐさの表れでもあるのです。私たち大人は、そうした子供の思いをしっかりと受け止めながら、それを周囲と折り合いをつけながら発揮できる力に育てていく。それが、子供の健やかな成長を願う親御さんの役割だと言えるでしょう。

ルールを大切にする気持ちを認めつつ、臨機応変に考えることの大切さも教える。人との関わり方のスキルを具体的に指導し、支援する。時には葛藤を抱えながらも、子供なりのペースで成長を見守り、応援する。一人ひとりの発達障害児の特性に寄り添いながら、長い目で関わっていくことが何より求められています。

強い正義感を持つ発達障害のお子さん。周囲から浮いてしまうのではと不安を感じてしまう親御さんも多いかもしれません。でも、その真っ直ぐさは、見方を変えれば子供の大きな可能性です。まわりの大人が理解と愛情を持って支えていけば、必ずその芽は大きく育っていくはずです。子供の長所として正義感の強さを捉え、自信を持って子育てに臨んでいただければと思います。

         記事一覧へ戻る