2024.03.17
  • コラム

微細運動とは?発達段階と習得の順序。手先の器用さを伸ばすヒント

微細運動と粗大運動の違い

微細運動=指先を使った細かな動作

微細運動とは、手指の細かな動作のことです。日常生活の中では、ボタンをかける、ひもを結ぶ、はさみを使う、鉛筆で絵を描くなど、様々な場面で微細運動が必要とされます。
他にも、ビーズ通し、パズル、ブロック遊び、お箸の使用など、子どもの遊びや生活の中に微細運動を必要とする活動は数多く存在します。
また、手指の巧緻性(器用さ)は、学習面でも重要な役割を果たします。文字を書いたり、細かい作業をしたりする際には、正確な手の動きが欠かせないのです。

粗大運動=身体を大きく使った動作

一方、粗大運動とは、全身を大きく使った動きを指します。歩く、走る、跳ぶ、登る、投げるなど、全身を使った活動が粗大運動に当てはまります。
粗大運動の具体例としては、ボール遊び、かけっこ、縄跳び、鉄棒などが挙げられます。これらの活動は、身体全体のバランスやコントロール、協調性を養うのに役立ちます。

粗大運動から微細運動への発達の流れ

子どもの運動発達は、一般的に粗大運動から微細運動へと進んでいきます。まず、首がすわり、寝返りをうつなど、全身を使った大きな動きが可能になります。そして、つかまり立ちや歩行など、移動運動が活発になる時期を経て、徐々に手指の細かな動きが洗練されていくのです。
つまり、全身の運動能力が土台となって、微細運動の習得が進んでいくと言えるでしょう。

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微細運動の発達段階

基本的な動作:つかむ・握る・つまむ

微細運動の発達は、まずは「つかむ・握る・つまむ」といった基本的な動作から始まります。
新生児は物を握る反射的な動作ができますが、意図的につかむことはまだ難しいものです。それが、見たものに手を伸ばしてつかむようになり、手と目の協応動作が発達してきます。やがて、親指と他の指を使ってつまむ動作ができるようになり、徐々に小さなものでも正確につまめるようになります。

応用的な動作:積み重ねる・はめ込む・そろえる

基本的なつまむ動作が身についてくると、次は「積み重ねる・はめ込む・そろえる」といった、より複雑な動作に挑戦します。
積み木を重ねたり、大きめのパズルのピースをはめ込んだりする遊びが可能になってきます。クレヨンを手に持って自発的になぐり描きを始めるのもこの時期の特徴です。
積み木の数を増やしたり、線や円を描いたりと、徐々により複雑な動作ができるようになっていきます。

高度な技術:ひもを結ぶ・ボタンをかける・ハサミを使う

さらに成長すると、より高度な微細運動に挑戦します。
ひもを結んだり、ボタンをかけたりといった、両手を協調させる動作がその代表例です。ハサミを使って紙を切ることもできるようになります。ボタンの着脱がスムーズになり、ハサミを使って紙を動かしながら切ることができるようになると、微細運動はかなり洗練されてきた証拠です。
また、箸を使って食事をしたり、鉛筆を正しく持って文字を書いたりできるようになるのもこの時期の特徴です。

微細運動の習得順序

全体的な動きから細かな動きへ

微細運動の習得は、全体的な動きから細かな動きへと進んでいきます。先ほどご説明したように、最初は手全体を使ったつかむ動作から始まり、次第に指先を使った細かなつまみ動作へと移行していきます。
例えば鉛筆を持つ場合も、初めは手全体で握るような持ち方から、徐々に3点で安定させる持ち方へと変化していくのです。このように、大まかな動きを基盤にしながら、少しずつ細かな動きを獲得していくのが一般的な発達の流れと言えるでしょう。

両手を一緒に動かす動作から片手それぞれが独立した動作へ

微細運動は、徐々に左右の手がバラバラに動く動作へと移行していきます。
例えば、ハサミを使う動作は、触りたてのときは両手でハサミを持って切る子もいますが、次第に片手に紙を持ち、もう一つの手に持ったハサミで器用に切るようになっていきます。

ひとつひとつの動作の組み合わせが複雑な動作になる

複雑な微細運動も、分解してみるとひとつひとつの動作の積み重ねによってできていることがわかります。
例えば、ボタンをかける動作も、ボタンを持つ、ボタン穴に合わせる、ボタンを穴に通す、ボタンを離すといった、一つ一つの動作の連続です。
ひもを結ぶ場合は、左右の手でひもを持つ、ひもを交差させる、ひもを引き抜く、ループを作るなど、より細かな動作が多く組み合わさります。

このように複雑な微細運動を習得する際も、一つ一つの動作を分解してスモールステップで進めていくことが大切です。

微細運動を促すための環境づくり

家庭でできる手指の遊び

微細運動の発達を促すためには、家庭での遊びが大きな役割を果たします。例えば、粘土で遊ぶことは、指の力加減や柔軟性を養うのに効果的です。ビーズ通しや折り紙を折る遊びは、指先の器用さを高めてくれます。
絵本のページをめくる、シールを貼る、スプーンですくうなど、日常の何気ない動作の中にも、微細運動を鍛える機会がたくさん詰まっています。子どもの興味関心に合わせて、手指を使う遊びを積極的に取り入れていきたいですね。

おもちゃ選びのポイント

子どもの微細運動を伸ばすためには、適切なおもちゃ選びも重要なポイントです。ブロックや積み木、パズルなど、手先を使って遊ぶおもちゃは効果的です。子どもの興味や習熟度に合わせて、難易度を徐々に上げていくことを心がけましょう。
大きなパーツから始めて、少しずつ小さなパーツに移行するなど、子どものペースに合わせた選び方が大切です。

日常生活の中での練習機会

微細運動は、遊びの中だけでなく、日常生活の様々な場面で練習することができます。
衣服の着脱、食事、歯磨きなど、毎日の生活の中に、手指を使う機会がたくさんあります。例えば、ボタンやチャックを自分で留める、スプーンや箸を使って食べるなど、子どもが自分でやろうとする意欲を大切にしながら、できることは子どもに任せ、難しいところは手助けする。そんな関わり方が、微細運動の習得を後押ししてくれるはずです。
「ご飯をこぼしちゃうから食べさせてあげよう」「時間がかかるからボタンを留めてあげよう」と思う気持ちをグっとこらえて、お子さん自身に頑張る機会を与えてあげるためには、心と時間の余裕も必要ですね。

微細運動に困難さがある場合

発達の個人差と相談のタイミング

微細運動の発達には、個人差があるものです。同じ年齢の子どもでも、器用さや習得のスピードは一人ひとり異なります。ただし、日常生活に大きな支障をきたすほど微細運動が困難な場合は、専門家に相談することをおすすめします。
作業療法士など、発達の専門家に相談することで、適切な評価と支援を受けることができます。子どもの様子を見ながら、必要に応じて早めの相談を検討しましょう。

作業療法士による評価と支援

微細運動に困難さがある場合、作業療法士による評価と支援が有効です。作業療法士は、子どもの手指の巧緻性や、目と手の協応、両手の協調運動などを詳しく評価します。
その上で、子どもの発達段階に合わせた遊びや練習を提案してくれます。つまむ力を高める遊びや、目と手の協応を鍛える活動など、子どもの苦手なところを少しずつ伸ばしていくための支援が受けられます。
なお、専門家に相談することが、子供の発達障害の有無に直接関係するとは限りません。あくまで、今の子供の発達の過程を客観的な目で見てもらい、適切な関わり方のヒントをもらえると思って、前向きに考えた方がよいですね。

園・学校との連携の重要性

微細運動の困難さは、園や学校生活にも影響を及ぼすことがあります。手指の不器用さから、着替えや給食、図工での制作活動などが難しく感じられるかもしれません。また、時間が他の子よりも極端に掛かってしまう場合は、周囲の流れについていけなくなる懸念も。子どもの状況を園や学校の先生とよく話し合い、必要な配慮を依頼することが大切です。

例えば、着脱の時間を長めにとる、箸の持ち方を工夫する、補助具を活用するなど、子どもが過ごしやすい環境を一緒に考えていくことが重要です。医療機関と園・学校が連携し、子どもを多方面から支えることで、微細運動の困難さを乗り越えていくことができるでしょう。

まとめ:焦らずゆっくり、楽しみながら微細運動の習得を!

微細運動の習得は、一朝一夕には進みません。一つ一つの動作を根気強く練習し、少しずつ組み合わせて完成させていく。それには時間と繰り返しが必要不可欠です。うまく遊びの中に取り入れていくことで、子どもはその過程を楽しみながら成長に繋げていくことができます。

大切なのは、一人ひとりのペースに合わせること。焦らず、ゆっくりと、子どもの興味や特性に寄り添いながら、成長を見守りましょう。微細運動の発達には個人差があり、その習得の速度はそれぞれ異なります。子どもの可能性を信じて、微細運動の発達を楽しみながら見守っていきたいですね。

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