- 子育てコラム
新版K式発達検査の内容って?成り立ちや結果の見方も解説
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新版K式発達検査の概要
新版K式発達検査の目的と特徴
新版K式発達検査は、子どもの発達を多面的に評価するための心理検査として、1951年に京都市児童院(現在の京都市児童福祉センター)で開発されました。
この検査の特徴は、子どもの認知、言語、運動、社会性など、様々な領域の発達を総合的に捉えることにあります。自閉症スペクトラム障害など、発達障害の診断において、重要な判断材料の一つとして活用されています。
新版K式発達検査は、乳幼児から成人まで、幅広い年齢層を対象としており、個人の発達の特性を長期的に追跡することが可能です。
新版K式発達検査の歴史と改訂の経緯
新版K式発達検査は、嶋津峯眞、生澤雅夫らによって開発された当初、京都市児童院とその周辺の限られた地域や研究者の間で使用されていました。しかし、1978年に実施された大規模な改訂と再標準化を機に、この検査の有用性が広く認知されるようになりました。
1980年に「新版K式発達検査」として正式に刊行された際には、0歳から10歳までを対象とする検査でしたが、その後の改訂によって適用年齢が徐々に拡大されていきます。1983年の「新版K式発達検査増補版」では、12歳、13歳までがカバーされるようになり、2001年の「新版K式発達検査2001」では、成人までを対象とするに至りました。
このように、新版K式発達検査は、時代の変化と共に改良が重ねられ、より幅広い年齢層の発達評価に対
応できるようになってきたのです。
新版K式発達検査の内容
認知・適応領域
認知・適応領域では、子どもの認知能力や問題解決能力、環境への適応力などを評価します。
検査項目の例
年齢によって検査内容は大きく変わりますが、代表的な例としては積み木を使った形の模倣、模様の構成、折り紙、図形の描画などがあります。子どもの知的発達の水準や特性を捉えることができます。
言語・社会領域
言語・社会領域では、子どもの言語理解や表出、コミュニケーション、対人関係などを評価します。
検査項目の例
日常的な語彙、数の理解、文章の復唱、長さ・重さなど程度を表す概念の理解などがあります。また、他者との関わりや社会的なルールの理解、自己統制などの社会性の発達も重要な観点となります。
姿勢・運動領域
姿勢・運動領域では、主に子どもの粗大運動の発達を評価します。粗大運動とは、全身を使った大きな動きのことで、座る、立つ、歩くといった基本的な運動能力や、ボールを投げる、跳ぶ、片足立ちをするなどの協調運動が含まれます。
ただし、姿勢・運動領域は他の2領域に比べると、日常生活において困りにつながる機会が少ないため、4歳までが対象となっています。ハイハイやつたい歩きなども検査項目に含まれていることからも、早期での支援を考える上で重要な領域と考えられます。
全体的発達と生活年齢
新版K式発達検査では、認知・適応と言語・社会の両領域の結果を統合し、全体的な発達の姿を捉えます。発達指数(DQ)や発達年齢(DA)といった指標によって、同年代の子どもとの比較や、発達の偏りを知ることができます。
また、認知と言語の発達のバランスから、子どもの発達の個性を推し量ることも可能です。具体的な例を挙げてご説明すると、
- 認知・適応領域は同年代に比べても高く検査項目別で見てもバランスよくできている。
- 言語・社会領域はやや困難さが見られ、実際の月齢よりも半年分の遅れが見られる。特に数の概念において遅れがある。
といったように、子供の個性を確認することができます。
新版K式発達検査を受けるまでの流れ
新版K式発達検査を受けられる場所
新版K式発達検査は、主に以下のような場所で実施されています。
- 児童相談所や児童発達支援センターなどの公的機関
- 大学や研究機関の子ども発達クリニック
- 小児科や心療内科などの医療機関
- 心理療法士や作業療法士などの個人事務所
お住まいの地域の児童相談所や発達支援センターに問い合わせると、新版K式発達検査を実施している施設や専門家を紹介してもらえる場合があります。また、かかりつけの小児科医に相談するのも一つの方法です。
新版K式発達検査の実施方法
検査の流れと所要時間
新版K式発達検査は、子どもと検査者が一対一で向き合って行います。さまざまな課題を提示しながら、子どもの反応を観察していきます。課題は、子どもの発達段階に合わせて選ばれ、徐々に難易度が上がっていく構成になっています。検査の所要時間は、子どもの年齢や状態によって異なりますが、おおむね30分から1時間程度です。
子供がまだ小さく母子分離がまだ難しい場合などは、親が立ち会うこともありますが、原則、ヒントを与えたりといった関わりは認められません。
検査者と子供の関わり方
検査者は、子どもの自然な反応を引き出すことを心がけます。子どもが課題に集中できるよう、優しい言葉がけやサポートを行いながら、できるだけ子どもの自発性を尊重します。
子どもが不安になったり、疲れが見られる場合は、無理をせず、子どものペースに合わせて検査を進めることが大切です。
検査環境の設定
新版K式発達検査は、子どもが安心して力を発揮できる環境で実施することが望まれます。騒音や人の出入りが少なく、子どもの注意が散漫にならない静かな部屋が適しています。机と椅子の高さは子どもに合ったものを用意し、おもちゃや検査器具は子どもの手の届く位置に配置します。子ども一人に検査者が一人つく個別検査の形式で行うのが一般的です。
新版K式発達検査の結果の見方
発達指数と発達年齢の算出方法
新版K式発達検査の結果は、発達指数(DQ)と発達年齢(DA)で表されます。DQは、同年代の平均的な発達を100とした場合の、子どもの発達の位置を示す指標です。DAは、子どもの発達が何歳相当かを示す指標で、月齢で表されます。これらの指標は、認知・適応、言語・社会、姿勢・運動のそれぞれの領域ごとの数値と、総合的な数値の両方が算出されます。
領域別の評価の見方
検査結果は、領域ごとの発達の特徴を視覚的に捉えられる評価としてまとめられます。グラフ上で、子どもの発達の強みや弱み、アンバランスさなどを読み取ることができます。
発達の凸凹は、子どもの個性と捉えられる場合もありますし、発達の偏りを示している場合もあります。子どもの日常生活の様子と照らし合わせて、総合的に解釈することが求められます。
文章による結果の解説
作業療法士や医師など、検査を担当した専門家から各領域に対する解説の文章が記載される場合も多いです。この記入欄には、検査中の子供の情緒面に関する記載や、検査中に表出したこだわりなど、数字には表れない事柄について記載されることもあります。
多くは結果説明の機会が後日に設定されることになるため、その際に疑問点などは積極的に質問しましょう。
検査結果の限界と留意点
新版K式発達検査は、子どもの発達の全体像を知るための有用なツールですが、万能ではありません。検査の結果はあくまで、ある時点での子どもの姿を切り取ったものです。子どもの発達は日々変化するため、継続的に見守っていく必要があります。
また、検査場面だけでは捉えきれない子どもの能力や可能性もあるでしょう。検査結果は、保護者や保育者、医療従事者などの気づきと組み合わせて、慎重に解釈することが大切です。
新版K式発達検査の結果を活用する場面
発達障害の診断の参考
新版K式発達検査は、発達障害の診断を補助するツールとしても用いられます。自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などの発達障害は、早期発見と早期支援が重要とされています。
新版K式発達検査によって、子どもの発達の特性を詳細に評価することで、診断の精度を高めることができます。ただし、発達障害の診断には、他の検査や医学的な判断が欠かせません。新版K式発達検査は、あくまで補助的な役割を担うものです。
療育における個別支援計画の立案
新版K式発達検査は、子どもの発達支援のための個別支援計画を立案する際にも活用されます。検査結果から、子どもの発達の課題や目標を明確にし、それに合った指導方法や教材、関わり方を考えていきます。
また、定期的に新版K式発達検査を実施することで、子どもの発達の変化を数値化して捉えることができます。療育の効果を客観的に測定し、方針を見直すための指標となります。
就学先決定のための資料
新版K式発達検査の結果は、子どもの就学先を決める際の重要な資料となります。特に、発達の遅れや偏りが見られる子どもの場合、どのような学びの場が適しているかを判断する必要があります。
例えば、小学校への就学相談において、普通級、通級、特別支援級のどれに所属するのかを検討する際などに用いられます。また、新版K式発達検査の結果は、子どもの認知面、言語面、社会性の発達の特徴を明らかにするため、就学相談においても貴重な情報となるのです。
新版K式発達検査と他の発達検査の比較
遠城寺式・乳幼児分析的発達検査との比較
遠城寺式・乳幼児分析的発達検査は、新版K式発達検査と同じく、乳幼児の発達を総合的に評価する検査として知られています。遠城寺式検査では、運動、社会、生活習慣、言語、探索操作の5領域について、より詳細な発達の姿を捉えます。
一方、新版K式発達検査は、認知・適応と言語・社会の2領域に焦点を当て、全体的な発達の水準を評価することに主眼が置かれています。両者は発達検査としての役割を担いつつ、それぞれ異なる特色を持っていると言えます。
WISC知能検査との関連性
新版K式発達検査は、主に乳幼児期の子どもを対象とした発達検査ですが、就学後の子どもの知的能力を評価する検査としては、WISC(ウェクスラー式知能検査)が広く用いられています。WISCは、言語理解や知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度といった、より高次の認知機能を測定します。
まとめ:新版K式発達検査を正しく理解し、活用するために
新版K式発達検査は、子どもの発達を多角的に評価するための有用なツールです。認知・適応、言語・社会の諸側面から、子どもの発達の特徴を捉えることができます。検査の結果は、子育てや保育、療育、発達障害の診断などに役立てられています。一方で、検査結果の解釈には、慎重さが求められます。子どもの発達は、検査場面だけでなく、日常生活の文脈の中で捉えていく必要があるでしょう。
大切なのは、新版K式発達検査を子どもの発達を支えるための一つの手がかりとして活用していくことです。検査結果は、保護者や保育者、医療従事者などが子どもへの理解を深めるための共通言語となります。子どもの発達の可能性を信じ、長期的な視点から見守り、励まし、必要な支援を行っていく。新版K式発達検査が、子どもの健やかな成長を後押しするツールとなることを願っています。