- 子育てコラム
保育園・幼稚園で加配を勧められたら?対象となる子供や手続きの順序を解説
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加配って?
加配の意味と読み方
加配とは、保育園や幼稚園において、障害のある子どもや集団生活を送るにあたって困りごとを抱えている子どもに対し、サポートや援助ができるよう、通常の職員数に加えて先生を配置することを指します。
「かはい」と読み、「加配保育士」「加配の先生」などと呼ばれることもあります。加配の先生は、対象となる子どもに寄り添い、個別的な支援を行うことで、集団生活への適応を助ける役割を担っています。
加配の対象となる子ども
加配の対象となるのは、主に発達障害や身体障害、慢性疾患などがある子どもです。例えば、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などの発達障害の診断がある場合、加配の対象となる可能性が高いと言えます。また、発達障害の診断には至らないものの、集団生活になじめない、コミュニケーションが苦手、パニックを起こしやすいなど、発達の凸凹が見られる子どもも、加配の対象となるケースがあります。
ただし、特別な配慮が必要な子どもを受け入れる基準は、自治体や園によってさまざまです。例えば、障害者手帳の保持者、特別児童扶養手当対象者、医師等による診断を受けていることなどが基準となる場合があります。詳細は、お住まいの自治体に確認する必要があります。
加配の目的と役割
加配の主な目的は、対象となる子どもが安心して園生活を送れるようにすることです。加配の先生は、子どもの特性や困り感に合わせて、個別的な支援を行います。
例えば、見通しを持ちやすいよう一日の流れを丁寧に伝える、感覚過敏がある場合は刺激を調整する、コミュニケーションが苦手な子どもには代弁したり橋渡しをしたりするなど、様々な役割を果たします。
また、子どもの行動や反応を細やかに観察し、適切な関わり方を他の保育士に助言することも、加配の先生の重要な仕事の一つです。
加配が必要な子どもはどんな子?
発達障害の特性と加配の必要性
発達障害のある子どもは、その特性ゆえに集団生活に適応しづらいことがあります。例えば、自閉症の子どもは、友だちとのコミュニケーションに困難を抱えたり、こだわりの強さからパニックを起こしたりすることがあります。ADHDの子どもは、衝動性が高く、じっと座っていられない、ルールを守れないなどの課題を抱えやすいです。
発達障害の特性は多岐にわたり、一人ひとりの症状も異なります。加配の先生は、子どもの特性を理解した上で、適切な支援を行うことが求められるのです。
グレーゾーンの子どもと加配
発達障害の診断がついていなくても、発達の凸凹があるグレーゾーンの子どもも、加配の対象となることがあります。集団の中で浮いてしまう、パニックを起こして他の子どもの活動を妨げてしまう、一斉の指示が理解できずに立ち歩いてしまうなど、園生活での困難さを抱えている子どもは少なくありません。
加配の先生が付くことで、そうした子どもの困り感に寄り添い、個に応じた支援を行うことができます。ただし、グレーゾーンの子どもへの対応は自治体によって異なるため、詳しくは、お住まいの自治体に問い合わせてみてください。
集団生活での困難さと加配の重要性
発達の課題を抱える子どもにとって、集団生活はストレスの多い環境になりがちです。園では、集団活動への参加や友だちとのコミュニケーション、ルールの理解と遵守など、様々な場面で適応が求められます。しかし、発達障害のある子どもは、そうした集団への適応に困り感を感じることもあります。
加配の先生が付くことで、子どもは安心感を得て、少しずつ集団生活に慣れていくことができるかもしれません。加配の先生は、子どもの頑張りを認め、自信をもたせると同時に、周囲の子どもたちに対しても、発達の多様性への理解を促すなど、集団の調整役としても重要な役割を担っているのです。
加配の種類と配置基準
加配はどんな保育園や幼稚園でも利用できる?
加配制度は、公立、私立、認可、認可外、こども園、小規模保育園などの様々な形態の保育施設で利用可能です。ただし、実際の利用状況は園の種類によって異なる傾向があります。公立の認可保育園では、自治体の予算措置により加配制度が整備されているケースが多いですが、私立の認可外保育施設では、独自の予算で加配の先生を雇用する必要があるため、利用が限定的になる可能性があります。
特に、小規模保育園では、園児数が少ないため、加配の先生を配置するための予算や人員を確保することが難しいかもしれません。
加配保育士の配置基準
加配保育士の配置基準について、具体的な基準は自治体によって異なります。
障害の程度を問わずに一律の配置基準を設けている自治体では、「障害のある子ども3人に当たり保育士1人」「障害のある子ども1人に当たり保育士1人」「障害のある子ども2人に当たり保育士1人」という基準を設けている割合が多いようです。
加配の先生は、園の状況によって、もともと保育園にいた先生が担当することもあれば、新しく雇用さることもあります。
加配を依頼する際の手順と注意点
園との話し合いと情報共有の重要性
加配を依頼する際は、まず園との話し合いが不可欠です。我が子の発達の特性や困り感、加配を必要とする理由などを、具体的に伝えることが大切です。園の先生からも、集団生活の中での子どもの様子や課題、支援の方向性などについて意見を聞き、情報を共有します。
園との信頼関係を築き、子どもを支えるチームとしての一体感を持つことが、加配を有効に機能させるためのポイントだと言えます。
医師の診断書や意見書の準備
加配を依頼する場合、医師の診断書や意見書が必要になることが多いです。子どもがかかっている医療機関で、診断名や症状、生活上の困難さなどを記載してもらいます。
また、必要に応じて、他の専門機関での検査結果や支援の記録なども添付します。これらの書類は、加配の必要性を客観的に示す重要な資料となります。ただし、診断書の準備には時間がかかることもあるので、早めに動き出すことが大切です。
自治体への申請手続きの流れ
加配の申請は、基本的に園を通して自治体に行います。園から必要書類を受け取り、保護者が記入して園に提出、園から自治体に申請という流れが一般的です。
申請の時期は自治体によって異なりますが、4月の新年度に合わせて受け付けるケースが多いようです。ただし、年度途中でも必要性が認められれば加配が付く場合もあるので、園や自治体に相談してみることをおすすめします。
申請後は、自治体の審査を経て加配の可否が決定します。結果が出るまでには数週間から数ヶ月かかることもあるので、余裕を持って手続きを進めることが大切です。
なお、加配制度を利用するのに、保護者の自己負担はありません。
加配の先生との連携のポイント
加配の先生の役割と責任範囲の確認
加配が決まったら、まずは加配の先生の役割と責任範囲を確認することが大切です。基本的に、加配の先生は対象となる子どもに寄り添い、個別的な支援を行うことが仕事ですが、その具体的な内容は園によって異なります。
例えば、着替えやトイレ介助、食事の介助などは、加配の先生の役割に含まれるのかどうか、事前に取り決めておく必要があります。また、子どもが他の子どもとトラブルになった場合の対応や、保護者への連絡事項など、加配の先生の責任範囲についても明確にしておくことが求められます。
加配の先生は、基本的に対象となる子どもに寄り添い、個別的な支援を行うことが役割ですが、現実的には一日中、完全に一人の子どもにつきっきりになることは難しいかもしれません。特に、加配の必要な子どもが複数いる場合や、園全体の職員数が少ない場合などは、加配の先生も他の子どものサポートを兼ねることがあります。
例えば、加配の対象児が落ち着いて活動に参加できている時間は、加配の先生が他の子どもの様子を見守ったり、全体の保育に協力したりすることもあるでしょう。また、加配の対象児が休んだ日などは、加配の先生が他のクラスの子どもたちと関わる機会もあると考えられます。
子どもの特性や支援方針の共通理解
加配の先生との連携を深めるためには、子どもの特性や支援方針について、園全体で共通理解を図ることが欠かせません。子どもの障害特性や行動の背景、必要な配慮や関わり方など、加配の先生と他の保育士が情報を共有し、一貫した支援を行えるよう、園内の体制づくりが求められます。
保護者も、日頃から子どもの様子を丁寧に伝えたり、園からのアドバイスを家庭でも実践したりするなど、園と歩調を合わせた関わりを心がけることが大切です。定期的に面談を設け、子どもの成長や課題を話し合う機会を持つことも、連携を深めるためのポイントだと言えるでしょう。
突然、加配を保育園から勧められたらどうしたらいい?
保育園が加配を勧める理由の確認
特に発達障害の疑いを持っていなかった保護者にとって、我が子に加配が必要だと園から言われることは、ショックかもしれません。しかし、園が加配を勧めるのには、子どもの様子をよく見た上での判断があるはずです。まずは、園の先生から、加配が必要だと考える理由を具体的に聞くことが大切です。
集団生活の中で、子どもにどのような困難さが見られるのか、加配の先生が付くことでどのような改善が期待できるのか、園の考えを丁寧に確認しましょう。その上で、保護者自身も子どもの様子を振り返り、加配の必要性について考えを巡らせる必要が求あります。
園からの指摘に覚えのある部分もあるのではないでしょうか。子どもの発達の凸凹に早めに気づき、必要な支援につなげることは、保護者の大切な役目だと言えます。
加配に対する保護者の心構えと受け止め方
「うちの子に障害があるのかもしれない」「加配が必要なほど育ちに問題があるのでは」と、加配を勧められた時点で不安になるのは自然な心情です。確かに、加配は発達の凸凹のある子どもに付くことが多いのは事実です。しかし、加配が必要だからといって、必ずしも障害があるとは限りません。
発達の個人差は大きく、周囲の環境によっても子どもの適応の仕方は異なるのです。大切なのは、加配という資源を活用して、子どもの困り感に寄り添い、丁寧に支援していくことです。保護者の方には、加配を「できない子」の烙印ではなく、子どもの特性に合わせた配慮の一つと前向きに捉えてほしいと思います。
加配を契機とした支援体制の見直しと連携
加配を勧められたことをきっかけに、改めて我が子の発達の特性について向き合ってみましょう。園での子どもの様子を丁寧に聞き、家庭でも気になる点がないか振り返ります。必要に応じて、専門機関での発達検査を受けたり、療育につないだりすることも考えられます。加配の先生と協力しながら、子どもに合った支援の方向性を探っていくのです。また、加配を機に、園との連携をさらに密にすることも大切です。加配の先生を含め、園の先生方とこまめに情報を共有し、家庭と園が一体となって子どもを支える体制を整えていきましょう。保護者の方が前向きに捉え、園と手を携えていくことが、加配をより効果的に機能させるためのカギとなるはずです。
補足1:保育所等における障害児保育の歴史と加配
ここでは、加配制度についてさらに深く知るために、内閣府が毎年取りまとめている「令和5年度障害者白書」からの情報を紹介します。
厚生労働省は1974年度より、障害児保育事業において保育所に保育士を加配する事業を実施してきました。2003年度からは一般財源化され、2007年度には地方交付税の算定対象が拡充されています。
2015年度に施行された子ども・子育て支援新制度では、保育所等で特別な支援が必要な子供を受け入れる際に、地域の療育支援者の配置や、地域型保育事業での手厚い配置基準が設けられました。また、2017年度からは「保育士等キャリアアップ研修」に「障害児保育」の分野が盛り込まれ、担当職員の専門性向上とリーダー的職員への加算が行われています。
2018年度には、障害児保育に係る地方交付税の措置額が拡充され、各市町村の受入障害児数に応じた算定方式に改められました。このほか、障害児受入れのためのバリアフリー改修等の事業も実施されています。
これらの取り組みにより、障害児保育の体制は着実に整備されつつあるといえます。保育の現場では、加配保育士を設置することで、一人ひとりの特性に応じたきめ細やかな支援を行うことを目指す方向に年々シフトしています。
補足2:放課後児童クラブにおける障害児の受入推進
放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)、いわゆる学童では、療育手帳や身体障害者手帳等を所持する児童だけでなく、同等の障害を有すると認められる児童も含めて受け入れ体制を整えています。
障害児の受入れを行うクラブは年々増加しており、2022年5月現在で全26,683クラブのうち約59%にあたる15,801クラブで53,813人を受け入れています。個々の障害の程度等に応じた適切な対応のため、障害児を1人以上受け入れているクラブに対し、専門的知識等を有する職員の配置に必要な経費を、国が補助しています。
2017年度からは、障害児3人以上の受入れを行う場合の上乗せ補助や、医療的ケア児の受入れのための看護師等配置に必要な経費の補助を行っています。
2022年度からは、障害児3人以上の受入れに対する職員加配の補助を最大3名まで拡充するとともに、医療的ケア児の送迎や付き添い等に対する補助を創設し、障害児が放課後児童クラブを適切に利用できるよう支援しています。
これらの取り組みにより、放課後児童クラブにおける障害児の受け入れ体制は着実に整備されつつあります。
まとめ:加配を上手に活用するために
加配とは、発達の凸凹のある子どもの集団生活を支える重要な制度です。障害や発達の特性に応じて、個別的な配慮を行うことで、子どもは安心して園生活を送ることができるようになります。
園と手を携えながら、加配を契機により良い支援体制を整えていくことが、子どもの健やかな育ちにつながるはずです。